『女性のゴルフ振興憲章』の実現に向けて:女性とゴルフ部会インタビュー

『女性のゴルフ振興憲章』の実現に向けて

女性とゴルフ部会インタビュー

平山伸子 ゴルフ振興推進本部 副部会長(右)
吉村佐喜子 女性とゴルフ部会 部会長(左)

『女性とゴルフ部会』設立の経緯

―日本ゴルフ協会(JGA)内にゴルフ振興推進本部が発足するにあたり、どのような経緯で女性とゴルフ部会ができたのでしょうか。

吉村部会長 JGAには昨年度まで女子委員会があり、女性ゴルファーの拡大及びゴルフ界における女性の地位の向上を図るべく活動して参りました。

具体的には、2019年にR&A(Royal and Ancient Golf Club of St’Andrews)とJGAが『女性のゴルフ振興憲章』を取り交わし、同憲章のもと、女性ゴルファーの数を増やすこと、JGAと地区連盟を中心に女性理事・役員を増やすこと、競技上の試合数や参加人数における男女格差を是正することなどを目標として取り組んで参りました。

そしてゴルフ推進振興本部が発足する際、女性ゴルファーの拡大に向けた活動は、同本部の重要な柱として位置付けられ女子委員会の活動をさらに充実・発展させるため、推進振興本部内に『女性とゴルフ部会』が発足しました。今後は新たに『JGAゴルフ応援サイト』を中心とした広報活動やファクトを基にした継続的なデータ活用を行い、より多くの女性ゴルファーの普及を目指して活動して参ります。

―女性ゴルファーの増加と地位向上を図ることは、世界的な流れでもあるのでしょうか。

平山副本部長 男女格差の解消、平等・公平に取り組むことは、今の社会では世界的に当たり前の事だと思います。新たな『女性とゴルフ部会』の発足はR&Aと取り決めた女性のゴルフ振興憲章の実現をはじめ、JGAが女性ゴルファーに目を向け、女性の社会参加推進に向き合う表明だと思います。

平山副本部長

ゴルフ界における女性の立場の問題が社会的に論点となったのは、ゴルフがオリンピックの競技となったことが要因だったと思います。オリンピックは、ジェンダー平等が大きなテーマです。しかしゴルフ界は必ずしもそうではありませんでした。2020年夏季五輪の東京開催が決まり、会場となる霞ヶ関カンツリー倶楽部は決して閉鎖的な倶楽部ではありませんでしたが、女性正会員がいなかったことが取りざたされました。R&Aにも女性メンバーがいませんでしたし、格式ある名門とされる全英オープン開催コースにも女性メンバーがいなかったことも今は全て改善されました。

―R&Aの足元のイギリスはじめ世界的にゴルフ人口が大幅に減っています。何とかしなければいけないという危機感が、ゴルフ界にあるのでしょうか。

平山副本部長 ゴルフ規則を司る総本山のR&A、そしてUSGAも世界的なゴルフ人口減少傾向に真剣に向き合い、対策を講じることに踏み切りました。しかもR&Aは世界的にゴルフ振興、普及のための活動を推進し、支援もすると表明したことは心強いことです。こうしたタイミングでJGAの振興推進本部が立ち上がったことは極めてタイムリーであり、私たちも役割を果たしていかないといけないと改めて思っています。

―女性のゴルフ振興憲章とか“Women’s Golf Day”とか新しい動きが出てきました。これらが考え出された経緯を教えてください。

平山副本部長 『女性のゴルフ振興憲章』はR&Aのゴルフ振興、普及の活動のひとつの大きな軸として始まり、世界中のゴルフ協会、ゴルフ業界の団体、ゴルフ関連企業に呼びかけ、それぞれの協会、団体で各自の目標を設定してそのために実働していくという活動です。吉村さんの説明の通り、女性のゴルフ人口を増やす、女性のゴルフ、スポーツ界での活動の場を増やせるように取り組んでいきたいと思います。『女性のゴルフ振興憲章』には世界の125ヶ国・地域の多くの団体が賛同して活動に参加しています。

男女格差解消に取り組む

吉村部会長 JGA内の女性理事は、2019年は全体の14パーセントでした。『女性のゴルフ振興憲章』に基づき22年までに30パーセントまでに引き上げるという目標を掲げまして、お蔭さまで達成することができました。JGA一丸となって取り組んだ成果だと思っています。

競技数、参加選手数の格差についても、改善が見られます。毎年8月に霞ヶ関カンツリー倶楽部で、日本ジュニアゴルフ選手権が開催されております。12歳~14歳の部と15歳~17歳の部がありますが、15歳~17歳の部は、以前は男子が110人で、女子が68人と、男女の枠に大きな差がありました。

しかしながら、現在女子プロゴルフ界は若手の活躍もあり大変な盛り上がりを見せていますし、ジュニア界においても世界的に活躍する選手がでてきております。またこの大会はJOCより『JOCジュニアオリンピックカップ大会』の認定を受けており、オリンピックの理念からも男女同数が基本となっておりますので、競技委員会にお願いいたしまして、参加人数枠を男女同数にしていただきました。そして今年から正式に15歳~17歳の部は男女とも120人(プラス前年上位者5人)で行われ、12歳~14歳の部は男女とも60人(プラス昨年上位者5人)が隣接する東京ゴルフ倶楽部で開催されました。

またアマチュアシニア競技では、男子は「シニア」「ミッドシニア」「グランドシニア」と三部門がありますが、女子については「シニア」の一部門のみとなっております。今後、女子の「グランドシニア」を創設する方向で、競技委員会で検討を進めていただいております。女性の競技人口は増えておりますし、元気なシニアの方が多いですから、目標となる競技を作ることは大きな意義があると考えております。

吉村部会長

来年6月『女性のゴルフの日』“Women’s Golf Day”を開催

―女性ゴルファーの増加と、地位向上について、どのようなことを計画されていますか。

平山副本部長 女性ゴルファーを増やすという課題に対する具体的な計画としては、『女性のゴルフの日』“Women’s Golf Day”をひとつのイベントとしてゴルフ界に限らず幅広く世間に知ってもらうということです。現在、6月第一火曜日として来年は6月6日になりますが、その前一週間含め、全国的にゴルフ場、ゴルフ関連施設で女性に集まっていただき、ゴルフの素晴らしさ、楽しさ、魅力を再認識していただき、それを発信するしかけをしていきたいです。初心者は大歓迎で出来る範囲でレッスンの提供、ラウンドをする経験をしていただき、ゴルフ経験者にはとにかくゴルフプレーを楽しんでいただき、初心者も経験者も全員が交流できる場を設けて、新しい仲間、ネットワークが出来れば、それこそゴルフのなせることだと思います。ゴルフを始める、続ける、もっと楽しむきっかけになればと思います。

―何事も一回目は大変だと思います。やり方は、各ゴルフ場、練習場に任せるのでしょうか。

平山副本部長 基本的なガイドラインはありますが、現場の皆様が受け入れやすい、実施しやすいということが大事だと思います。先ずは初心者に参加しやすい環境作り、受け入れ体制を作ることが大事だと思いますが、受け入れ側が対応できるようでなければいけないとも思います。将来の来場者の発掘に繋がって欲しいと思います。

―こういう種まきは必要ですよね。Women’s Golf Day以外に、考えられていることはありますか。

平山副本部長 今後は幅広くゴルフ場、練習場連盟と連携してより多くの女性がゴルフに触れる機会を増やすことを考えていきたいと思います。きっかけを作って楽しさを実感してもらい、続けていただくということです。

また一方では全く違うピンクリボンがゴルフと連動して活動しているということもあります。

吉村部会長 ピンクリボンのコンペで、プレー後に「乳がん検診を受けましょう」というプレゼンテーションがございました。ピンクリボン運動の活動団体の理事で、ご自身も乳がん経験者の方のお話によると、病気の辛さもさることながら精神的に落ち込んでいた際に、ご友人が「カートに乗っているだけでいいので、ゴルフ場に行ってみない?」と誘って下さったそうです。ゴルフ場に出向いたことで気分的にも大変救われたので、「ゴルフには大変感謝している」という貴重なお話を頂きました。

平山副本部長 振興推進本部のもう一つの柱が『ゴルフと健康』で結び付く活動だと思います。

―ピンクリボン運動は、リボンを見ただけで、それがどういう活動が多くの人が理解しています。活動が長く続いているからこそ、だと思います。Women’s Golf Dayも、同様に認知されていくといいですね。

平山副本部長 Women’s Golf Dayの週、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の試合でも広報支援をしていただけたらありがたいです。目指すところはゴルフ界全体のイメージアップや普及で、全ゴルフ界で盛り上げていきたいと思います。

吉村部会長 女性初心者ゴルファーを増やす九州地区での取り組みを紹介させてください。福岡県南部地区の24倶楽部が協力し、ラウンド未経験の方を対象に3回の講習と9ホールのラウンド体験をしてもらうプログラムを始めました。3回の講習を受けた人は1年間、福岡県南部地区の24倶楽部において会員料金程度でゴルフ場を回れ、練習場も安く利用できます。また4人1班として、各班に1名の支配人が付いてサポートし、ゴルフ用品選びなどについてもアドバイスしてくれます。半年後に開催された卒業コンペには約85%の方が参加されたそうです。『女性とゴルフ部会』といたしましても今後このような活動もバックアップして各地に拡げて参りたいと思っております。

―こうした活動は各団体、ゴルフ場等でやっていると思いますが、今まではそれぞれがバラバラで行っていました。

平山副本部長 福岡の活動は素晴らしいと思います。ゴルフの振興推進事業は、実は皆さんがいろいろな活動をされています。今後は『JGAゴルフ応援サイト』を軸にJGAと8地区連盟、ゴルフ場、各ゴルフ関連団体、ゴルフ施設のみなさまとできる限り情報を共有して、相乗効果が生まれ、結果が最大になるようにしたいものです。そういうネットワーク化ができたらいいと考えています。

 

構成・髙岡和弘(情報シェアリング部会委員)

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