日高カントリークラブ(埼玉県)
高橋正孝理事長インタビュー
保育園、幼稚園児700人にゴルフ場を開放 父母がゴルフを始めるきっかけにも
――日高カントリークラブは2012年3月から10年以上にわたってゴルフ場のコースを幼稚園、保育園児に年2回、開放しています。どのようなきっかけで始めたのでしょうか。
高橋正孝理事長 今は子供たちが入ることができる芝生を持っている公園が少ないですからね。ゴルフ場というのはゴルファーが芝を削るところですから、子供たちがフェアウエイを走り回ったって、びくともしません。そのようなところで遊んでもらうと同時に、小さい時からゴルフ場になじんでもらおうと思ったのがきっかけでした。
ルールとしてグリーンだけには乗らないというのがありますが、それ以外はバンカーに入って砂遊びをしたっていいし、木陰でお弁当を広げてピクニック気分で楽しんでもらってもいい。ゴルフ場は広大な土地を所有していながら、わずかな数の会員にしかオープンしていないわけですから、土地の使い方としてはもったいないじゃないですか。子供たちも3年保育の期間に毎年来ていると、グリーンとかバンカーとかの専門用語も覚えて使うようになっていますよ。
また、同伴する父母の皆さんも若いジェネレーションが多く、ゴルフを経験したことがない人が多いのです。そのような方たちにゴルフを始めるきっかけとなってもらえれば、という思いもあります。ランチタイムにはビュッフェ形式の食事もほぼ原価で提供させていただき、それがきっかけでゴルフを始めた方もいます。ゴルフ場に来たことがある人というのは、まだまだ少ないですからね。ゴルフを始めるきっかけは、ゴルフ場に来てもらうのが一番です。
――そのような試みを始める時は、難色を示す方もいたのではないでしょうか。
高橋理事長 最初に提案した時は一部の人たちから、どうなのかなという声は出ました。でも、ゴルフ場はいろいろなものを備えているのですから、子供たちのことを考えれば、何らかの形で貢献できればという気持ちがあり、理事会にかけた時は、反対意見は少数でした。
――開放を呼び掛ける対象は日高市の保育園や幼稚園ですか。
高橋理事長 隣接する飯能市、入間市、狭山市、川越市などにも呼び掛けています。最初は先生たちに見に来てもらって、その先生方が他の保育園などにも情報を伝えてくれて、広がっていきました。一つの保育園、幼稚園が30~50人くらいで、今では全部で700人くらいが訪れます。結構な数に思えますが、池など危険なハザードがあるところを除いた3ホールを開放しますから、ゆったりと遊べますよ。春と秋の年2回開放するので、年間行事の一つとして組み込んでいる幼稚園や保育園もありますし、今では父母の人たちが楽しみにしていたりもします。ここで親同士が仲良くなって、新たなコミュニティーもできているほどです。
健康維持増進のためのJGA WAGスクールも 高齢者のQOLに貢献したい
――日高カントリー倶楽部の地域貢献は子供たちに対してだけではなく、高齢者の健康維持、促進にも及んでいます。ゴルフで健康増進に励もうというWAG(ウィズエイジングゴルフ・JGA WAGスクール)のプロジェクトにも積極的に協力しています。
高橋理事長 高齢化社会の課題というと、一つには毎日の生活を楽しく、生活の質を上げるクオリティ・オブ・ライフ(QOL)があり、ゴルフ場もこれに貢献していかなければと常々考えています。WAGとの関わりも、私が関東ゴルフ連盟の副理事長だった時に栃木県で東松苑ゴルフ倶楽部を経営する中島篤志さん(故人)が、ゴルフをすることで認知症を予防できるのではという話を持ち込まれたことがきっかけでした。そのためには学術的な裏付けが必要とのことで、日高市にも協力していただいて研究の被験者を募集しました。
この研究を通して、ゴルフには認知症予防に効果的な要素が取り込まれていることが実証され、次は実際にゴルフをやってもらおうと、プロや専門家にも入ってもらってゴルフ前後の体操なども含めたプログラムを組んでWAGスクールを立ち上げ、それを横に広げていきたいということで関係機関にもお願いをしました。これをどのように具体的にやっていこうかとなると、個々のゴルフ場とか、小さなエリアを単位にやっていくしかありません。日高市は市長も前向きで、高齢者のためのセクションもあり、そこで取り上げてもらって希望者を募っています。今ではプログラムを終えても卒業した人たちがグループを作り、ゴルフを続けているケースもあります。
――そのようなWAGスクールの卒業生に対しては、日高CCは具体的にどのように協力しているのでしょうか。
高橋理事長 卒業生の団体を見ると、皆さん和気あいあいとやっています。ただ、高齢者の方々にとってプレー代はやはり高いので、河川敷のコースやショートコースを紹介し、年に何回かは私どもの日高CCでプレーしてもらうという形をとっています。グループにリーダーシップがある人がいると皆を引っ張ってくれるので、そのような人を見つけるようにもしています。面倒見がいい人というのはなかなかいませんが、必ずいると信じて続けています。
――チャリティーゴルフ大会も年3回、開催していますね。
高橋理事長 2001年から続けていて、参加者は毎回150人前後。日高市や狭山市など、近隣の人に参加してもらい、チャリティーで集まった金額は児童養護施設や日高市の福祉協議会に寄付しています。児童養護施設への寄付は、女子研修会のメンバーから提案されたのがきっかけでした。また、日高市からは、車いすをたくさん買えたという報告もあります。もともと日高CCには地主さんが100人以上もいて、ゴルフ場と地域が密着していることから、このような地域貢献はやりやすいのです。
日高カントリークラブ
埼玉県日高市高萩1203
TEL:042-989-1311
構成・鈴木遍理(情報シェアリング部会委員)