「ゴルフって、楽しくて、楽しくて」。岐阜県関市にある岐阜セントフィールドカントリー倶楽部で毎週、欠かさずラウンドしている松本君子さんの年齢は、実に96歳。心から楽しんでプレーする姿が話題になっている。
ゴルフを始めたのが、62歳の時。夫を亡くし、やることがなくてパチンコ三昧だった君子さんをみかねて、息子の征士さん(71)が、「ゴルフでもやってみたら」と勧めたのがきっかけだった。
これがはまった。元々、ボウリングなどスポーツ好きだった君子さんは、ゴルフの魅力に取りつかれたという。近くの練習場のスクールに1年間、通い、基本を教わった。最初は、自宅のある各務原市のショートコースが実践の舞台だったが、スクール卒業後、1年ちょっとでホールインワンを記録。ショートコースでのホールインワンは、実に3度を数える。
スクールで仲間もできた。仲間と「水曜会」というサークルを作って、月に一度、征士さんが経営する蕎麦屋の定休日に、周辺のゴルフ場で18ホールの本格的なラウンドを楽しむようになった。
ゴルフ場のサポートへ感謝
ところが、90歳になったばかりの時、ゴルフ場で転んで左肩を脱臼。筋も1本切れて入院。退院後も含めて半年間、我慢の日々が続いた。その時、岐阜セントフィールドゴルフ倶楽部が「ハーフプレーでもいいですよ」と、受け入れてくれた。以後、週に一度、征士さんと一緒にプレーを楽しんでいる。
征士さん自身は、30歳代でクラブは握ったことはあるものの、練習場での経験しかない「ペーパーゴルファーだった」そうだ。君子さんがゴルフにはまった後も、「年に1、2度、付き合う程度」だった。それが、母親にゴルフを続けさせてあげたいと、今では毎週、一緒にラウンドをしている。
君子さん、征士さんとも、セントフィールドの会員ではない。「でも、ハーフラウンド料金を設定してくれ、(足腰強化のため)カートから離れて歩く距離が長いアウトコースの予約を取ってくれます」と征士さんは、ゴルフ場に感謝する。
ゴルフは何歳になってもできる
君子さんは昨年、心臓弁膜症の手術をして、また入院。退院後は、辛いリハビリ生活が続いた。だが、君子さんは「またゴルフをするぞという気持ちが、リハビリをする時の励みなりました」と話す。最初は、パターゴルフから始め、数か月で、週に一度のハーフラウンドができるようになった。
君子さんは、征士さんが脱サラをして26年前に始めた蕎麦屋「蕎麦まつも」の現役従業員でもある。「最初は、大学まで出してあげたのに蕎麦屋なんか始めて、と思いました。でも、お客さんとの会話も楽しめるし、毎日、お蕎麦も食べられる」と笑う。火曜日と水曜日の定休日以外は、毎日、「看板娘」として接客しているが、これも母親の心と体の健康を保ちたいという息子の愛情だろう。
「ゴルフ場に行くと、いろいろな方から年齢を尋ねられます」と君子さん。「年齢を言うと驚かれますが、『皆さんも健康なら、ゴルフは何歳になってもできますよ』と話しています」。インタビューの途中、君子さんは「ゴルフって、楽しいですよ」と、何度も口にした。スコアや飛距離など関係ない。ゴルフそのものを愛する人の言葉だと思った。
協力:
岐阜セントフィールドカントリー倶楽部 岐阜県関市神野字宮後3496
中部ゴルフ連盟
取材・文 高岡和弘(情報シェアリング部会委員)