ゴルフ場は地域のために何ができるか?赤城国際カントリークラブの取り組み

赤城国際カントリークラブ・代表取締役 山本清二様インタビュー

群馬の名山、赤城山の南麓に27ホールの雄大なコースが広がる赤城国際カントリークラブ。同クラブは今、様々な地域貢献活動や、地元のジュニアゴルファーの育成に取り組んでいる。2020年に社長に就任した山本清二さんは、群馬の企業、経済を支えてきた元銀行マン。その経験と、培った人脈を生かしながら、「ゴルフ場は地域にどう貢献できるか」を経営理念の一つの柱に据え、先頭に立って様々な活動を推進している。

――山本さんが社長に就任されたのは20年6月ですが、その時、どのような抱負、考えをお持ちでしたか。

山本社長  社長に就任して、ではどういうことをやろうかと思った時に、社員とお客さんに喜んでもらえるゴルフ場にしたいと考えました。まず、会社は利益を上げないといけません。次にその利益をどう分配するかという部分で、①従業員の給料に反映する②設備関係の投資をする③いざというときのために蓄える④地域のサービスに使う、という方針を立てました。

地域貢献事業の一つとして、群馬県在住の子供たちを対象に、ジュニアスクールという無料のレッスン会を、21年10月から始めました。以来、月に2回のペースで開催しています。

女子トーナメントで活躍していた柳澤美冴プロらが指導にあたっています。ゴルフのための準備運動をしてから、パターとアプローチを練習します。打球練習場も使うことができます。昼食も子供は無料です。親からは500円をいただきますが、そのお金は地域の児童養護施設へ寄付しています。

ジュニアスクールを続けているうちに、ジュニアの間から、もっとゴルフがしたいという声が出てきました。みんなの意欲に応えるため、ジュニア会員制度を作りました。今、小学4年生から大学2年生まで、40人以上います。正会員扱いで、ジュニアの月例競技も行っています。入会金は2万2千円で、預かり保証金はなく、年会費は1万1千円です。

群馬県ゴルフ協会が決めているジュニア料金は、ハーフで1100円です。その料金を目安にして、1100円で回り放題としました。カートを利用すると1100円をプラスします。カートは、自動車の運転免許を持っている保護者が運転しなければいけない決まりにしました。お子さんと一緒にラウンドをしたい保護者からは、ハーフで2930円をいただいています。「親子でゴルフ」という企画を作り、その金額でいいことにしました。

また、5月から無料の「目土プロジェクト」を開始しました。保護者1名にジュニア複数名で、トップスタートで目土をしながらワンラウンドを行い、14時以降に目土だけお手伝いいただく企画です。地元高校のゴルフ部は、午後ハーフ目土をしながらのプレーで無料です。いずれも前日までの予約が必要になります。

ジュニア会員は、練習場では何球打っても無料です。その代わり、1時間はボール拾いをするようにお願いしています。機械があるから、彼ら、彼女らが拾わなくでもいいのですが、ラウンド時の目土と同様、コースや施設への感謝、使わせてもらっていることへの感謝の気持ちを行動で示すことは、とても大切だと思っています。挨拶の大切さも伝えています。みんなに可愛がってもらわないと、そこでゴルフがしにくくなるよって。そういう話はよくしています。

地元の私立高校のゴルフ部には、アルバイト禁止の決まりがあります。ですから、ゴルフ場の業務を手伝えば、お金は渡せませんが、お礼としてプレーは無料という仕組みにしました。例えば、レストラン業務を手伝ってくれたら、空き時間で好きにラウンドしてもらっています。

ジュニア会員は、高校を卒業すると自動退会になります。でも、大学に進学しても継続したいという声が出てきたので、継続申請が出ればOKとしました。今、大学生は6人います。

大学生でも、業務を手伝ってくれれば無料でプレーできますし、手伝わずに朝一番から回りたければ、2200円でカートを使っていいことにしています。その中には、日本ジュニア選手権や全国中学校選手権で優勝した吉澤己咲君がいます。現在、明治大学生ですが、一昨年、男子ツアーの中日クラウンズに出場して、41位に入りました。

――ゴルフは、金銭的な負担が大きいスポーツですから、子供たちにとっても保護者にとっても、とても助かる制度だと思います。

山本社長  自分は子供のころ、野球に夢中でした。試合の前夜はワクワクして眠れないほどで、雨で中止になるとがっかりしたものです。子供のそうした意欲、エネルギーに応えてあげたいと思っています。あと、当クラブの所属の柳澤美冴プロは、法政大学時代に日本女子学生選手権に勝ち、プロのトーナメントでも活躍した経歴を持っています。彼女は、ジュニアから慕われていて、仕事中でもジュニアのレッスンをしていいと伝えてあります。レッスン料は2500円で、1人でも4人でも同じ料金です。

そのジュニア会員と群馬県ゴルフ協会のメンバーで、関東建設プレゼンツという試合を毎年5月に開催しています。1日がプロアマ戦、1日がワンデートーナメントで、今年で3回目です。関東建設さんが、当クラブの地域貢献事業に賛同してくれて、始まりました。今年は、プロ40人と、プロを目指しているジュニア会員11人が出ます。プロと回れる機会は少ないのでいい経験になるし、プロとアマを区別せずに順位を付けますので、上位に行けば子供たちの自信になると思います。プロには、合わせて500万円の賞金が出ます。

8月には、地域の子ども食堂に寄付することを目的に、小倉クラッチさんなど群馬県東毛地区の企業経営者らが金を出し合う「東毛企業withシニア女子プロ交流チャリティーゴルフ大会」が開催されます。これも今年が3回目です。シニア女子のプロとアマによる、やはり2日間の競技です。昨年は、元賞金女王の村口史子プロや岡田美智子プロ、柏戸レイ子プロ、生駒佳与子プロはじめ、たくさんの往年の名プレーヤーに参加していただきました。当クラブは場所を提供していますが、関東建設さんの試合を含めて地域の活性化を目的としています。

また、ゴルフ場の下の地域にある白川小学校にコーチを派遣して、スナッグゴルフを教えています。本当は、本物のゴルフを教えたいのですが、交通事情などの制約があってスナッグゴルフ教室を始めました。ゴルフって面白いね、と思ってもらうためです。

様々な種まきを行い、続けていくことが何より大切

――高齢者向けに「ゴルフ百歳合宿」という企画を昨年、始められました。

山本社長  青木功プロの専属トレーナーとして有名な比佐仁さんは、糖尿病とか高血圧などの基礎疾患のある方を集めて、運動による改善を図る事業を行っています。

比佐さんが来場された時、話を聞けるチャンスがありました。それまで使っていた施設が売却されて利用できなくなったとのことでしたので、皆さんが健康を取り戻すきっかけになるなら、ここを使ってもらいたいと申し出ました。昨年10月、第1回目を開催しました。「百歳ゴルフ」には、いくつになってもゴルフが楽しめる健康を保つ、という意味が込められています。

朝、前橋市内が見下ろせる雄大な景色を楽しみながらコース内を散歩し、野菜を食べ放題に食べて、その後、ゴルフをします。1ラウンドでもハーフでもいいのですが、疲れたら休む。夕食はまた野菜をたくさん食べて、ご飯は半分にする。お酒は飲み放題なのですけど、みんな疲れていてあまり飲みません。その後、比佐さんがトレーニングや健康について講話をします。翌日は、朝6時から3ホールぐらい歩いて、体をほぐしてから朝食。その後、ラウンド。これを繰り返します。5泊6日、3泊4日、2泊3日の3コースがありますが、昨年は告知がうまくいかず、80歳くらいのお二人が2泊3日コースに参加されただけでした。

ただ、ジュニアスクールも、最初は子供が本当に集まりませんでした。継続することで、参加者は増えていくと思っています。今年は、7月に開催します。ゴルフ場予約サイトや、SNSなども使って、告知していきます。

2泊3日コースは、2日間プレーができて、ロッジの宿泊代、すべての食事代が含まれて44000円です。打球練習場の球は有料ですが、アプローチ、パターなどの練習施設は使い放題です。有料にはなりますが、プロによるラウンドレッスン、アプローチレッスンも希望すれば受講できます。

比佐さんは、この合宿で、健康になるきっかけを作って欲しいと言っています。野菜をいっぱい食べて、ご飯を半分にして、適度な運動をすれば、健康は誰でも取り戻せるということを教えたいという強い気持ちを持たれています。

――群馬パース大学と結んだ協定について、教えてください。

山本社長  機能障害のある方、例えば肘が曲がらないとか、足がうまく動かない人を対象に、ゴルフを通じて障害を改善し、あるいは生きる喜び感じてもらうパース大の研究に協力するこということです。私がパース大の監事をしているものですから、「協力して欲しい」と頼まれました。

昨年10月、脳卒中でリハビリを受けている5人の方が来られ、パター練習場で、柳澤プロの指導を受けながらパットの練習をしました。杖がないと歩けない人が、パターを持つと一人で立ててしまうことがありました。食事も驚くほどたくさん食べられ、参加者の方々から、大変、喜ばれました。その中には、当クラブの会員だった方もおられました。

パース大リハビリテーション学部では、どういうことが機能障害の改善や心のケアに役立つかを研究しています。「体を動かしながら、頭も使うゴルフが効果的なのでは」と着目し、ゴルフを使った機能回復のプログラム作りを目指しています。

――パース大学の研究が進んでいくと、日本だけでなく、世界に発信できる内容になるかもしれませんね。

山本社長  地域や社会への貢献は、企業の使命だと考えています。みなさんに喜んでもらえることをやりたいという気持ちがあります。

今、ゴルフ場の経営は大変で、当クラブの会員の平均年齢は69.4歳です。若いゴルファーを増やし、お年寄りに元気を保っていただかないと、将来はありません。ゴルフはラウンド代や道具をそろえるのにお金がかかるというイメージがありますが、スナッグゴルフの小学生大会などでしたら、ハードルは低いと思います。そうした知恵を出し合い、その中から渋野日向子プロのような選手が出てきたら、群馬県のゴルフが大きく変化するかもしれません。そのためにも、様々な種まきを行い、続けていくことが何より大切だと考えています。

 

取材/文・髙岡和弘(情報シェアリング部会・委員)

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