ゴルフを通じて高齢者の健康維持増進を目的とする「JGA WAGスクール」の卒業生で構成された「WAGクラブ」の第1回イベントとなるラウンド会が11月27日、埼玉県日高市の日高カントリークラブで開催された。
WAGは関東ゴルフ連盟(KGA)などが認知症予防におけるゴルフの効果を研究するため2016年に立ち上げた「ウィズ・エイジングゴルフ協議会」の゛ウィズエイジングゴルフ゛から取り入れた略称で、当時65歳以上だった被験者、その後に実施された8回の旧WAGスクールや、今年から始まったJGA WAGスクール1Dayプログラムを受講した男女35人が参加した。
WAGの活動は現在、日本ゴルフ協会(JGA)が引き継いでおり、WAGクラブではスクール卒業後もゴルフを継続できる環境を整え、特にシニア層の健康を損なう原因となる孤独・孤立を防ぐなど、ゴルフを通じて地域社会に根差した活動を行っている。
今回はJGAとKGAの共催イベントとして開催。会場の日高CCは休業日だったにもかかわらず、このイベントのために特別に開放した。
ラウンド会では、JGAゴルフ振興推進本部「ゴルフと健康部会」の中島和也部会長が「これまでゴルフが出来なかった方、やめられていた方にWAGクラブでゴルフを続けていただき、長く元気で健康でいていただきたい。そのために私たちも皆さんが集まることが出来る機会を、WAGクラブを通してなるべく多く提供していきたいと思っています」と挨拶。その後、全員でウォーミングアップの準備体操を行い、コースに出た。
6ホール・オルタネート方式を採用するなどシニア層に優しい工夫
この日は東・西コースを使った6ホールを、4人が2人ずつのペアとなって1つのボールを互いに打ちあうオルタネート方式で行った。参加者はアプローチバッグやキャディーバッグを手に、歩いてのラウンド。それでも全員が快晴のもとで最後までプレーを楽しみ「いやー、セルフバッグで回るのは大変。プロの試合でのキャディーさんの大変さが、この歳になって分かったよ」と元気に笑う男性もいた。
参加者の中で最年長86歳の鈴木雪子さんも、アプローチバッグを手に゛完走゛。WAGをきっかけに80歳で初めてクラブを握ったにもかかわらずナイスショットを連発し「この年齢で、こんないいコースを皆と回らせてもらい、本当にありがたいです」と感激。さらにラウンド後は練習場に直行して課題をチェックしながら球を打ち、ゴルフが生きがいとなっているようだ。
夫婦ペアで回った方も多く、大病を患ってゴルフから遠ざかっていた佐藤秀範さん(73)は、ガードバンカーからナイスオンした妻のなつさん(69)に「私がバンカーからうまく出したんだから、あなたはパットをしっかり入れてよ」とハッパを掛けられるシーンも。健康だけではなく、ゴルフは夫婦のコミュニケーションにも最適といえるだろう。
ラウンド後は再び全員でクールダウンの体操をし、クラブハウスのレストランで中島部会長を相手に日本女子オープンのゴルフウエアや日本オープンの帽子など提供された賞品をめぐるじゃんけん大会でフィナーレ。じゃんけん大会も“頭をつかう”工夫をし、勝ち続けた人、負け続けた人、あいこを続けた人が賞品をもらえるなど、参加者も頭をフル回転させながら挑む。WAGクラブの第1回イベントは、最後まで参加者の笑顔が絶えなかった。
少子高齢化が進む日本で、高齢者の健康維持増進は喫緊の課題。高齢者が外に出て、無理なく体を動かしながら楽しみ、コミュニケーションも活発にできるゴルフは、そのための最適なスポーツの一つだ。今回のイベントはJGAとKGAが緊密に連携し、日高CCの全面協力があって、参加費2000円で実現できた。JGA WAGスクールはゴルフのレッスンはもちろん、けがや事故を防止するために「ボールを打つ人の前に出ない」など安全に配慮した指導もマニュアル化して徹底されている。このような活動が全国に広がっていくことを願ってやまない。
取材/文・鈴木遍理(情報シェアリング部会委員)
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