People『第5回 男子80歳以上・女子70歳以上で競う』九州スーパーシニアカップ

今年で9回目を迎えた「九州スーパーシニアカップ」(九州ゴルフ連盟=GUK=主催)は10月26日、熊本県南区の熊本ゴルフ倶楽部城南コース(男子=5665ヤード、女子=5174ヤード、ともにパー72)において18ホールストロークプレーで行われ、男子は丹山慶二郎(宮崎・都城母智丘CC、84歳)が2オーバー74で、女子は岩切マリ子(宮崎GC、72歳)が10オーバー82でそれぞれ初優勝して幕を閉じた。
エージシュートを達成した丹山は歴代最年長での九州チャンピオン。

参加資格はGUK加盟倶楽部会員のアマチュアゴルファーで、男子が今年12月末時点で80歳以上、女子が同じく70歳以上の年齢制限がある。男子の場合、80歳以上は第2次世界大戦終結以前に生まれたプレーヤーたち。つまり「戦前派の大会」というわけである。2年後の2025年にならなければ、戦後派は組み合わせ表に名前が載らない。
いくつになってもゴルフをこよなく愛し、情熱を注ぐスーパーシニアの溌剌としたプレーぶりをのぞいてみた。

毎年増え続ける出場者 初の100名越えに期待

温暖化のせいで、熊本の10月下旬の紅葉の進み具合は鈍い。その温かさがスーパーシニアの選手たちには、ありがたい。午前8時プレーオフ。アウトとインに分かれ、9分間隔で男子の後に女子が10時6分から続く。スタート前はウインドブレーカーなどを着込んでいた選手たちも数ホールが過ぎると、身軽な格好になっていく。年を重ねても、試合となると、たぎってくるものがある。

九州でスーパーシニアカップが始まったのは2015年。それまで80歳以上のゴルファーは九州グランドシニア選手権(例年10月開催)の際に、年齢別80歳以上の部を設けて、18ホールストロークプレーで実施していた。しかし、参加者の増加から同クラスを独立させ、「スーパーシニアカップ」として開催することになった。第1回大会のエントリーは年齢別時代からみても最多の65名(欠場7名)。女子の部は2020年に第1回大会をスタートし、エントリーは18名(欠場3名)だった。

これまでの出者数、エージシュート者数などをたどってみる。

回(年) 会場 男子出場者(名) 男子エージシュート(名) 女子出場者(名) 女子エージシュート(名)
第1回(15年) 小郡CC 58 7
第2回(16年) 小郡CC 64 13
第3回(17年) 小郡CC 69 3
第4回(18年) 小郡CC 82 14
第5回(19年) 小郡CC 81 11
第6回(20年) 小郡CC 83 20 15 1
第7回(21年) 小郡CC 92 29 24 1
第8回(22年) 熊本GC城南 64 18 19 1
第9回(23年) 熊本GC城南 75 14 19 1

開催当初から出場者は徐々に増えて、3年前には90名を超えた。一昨年、昨年とちょっと減少したが、それは開催地がプレーヤーの多い福岡県の小郡CCから熊本県の熊本GC城南コースに移ったからと推測される。来年は3年ぶりの小郡CCでの試合が決定しており、初の100名超えも期待される。

スーパーシニア世代の気骨を感じるのは、コロナ禍でも開催を中止しなかったこと。元々、この大会は第1、2回が6月、3~5回がGUKのシーズン最初の試合として桜の咲く3月下旬に開かれていた。それが2020年の新型コロナウイルスの感染拡大によって開催日が延期となり、この年は10月30日に行われた。時期は春から秋に変わっても、途絶えることはなかった。以後、競技はGUKの最終試合として定着している。

九州スーパーシニアの顔 今大会最高齢90歳の安藤喜三郎(大分中央CC)エージシュートは1420回

スーパーシニアの場合、どうしても年齢が話題になりがちだが、今大会に出場した75選手の内訳を見てみる。ルーキーイヤーとなる80歳16名、81歳19名、82歳10名、83歳14名、84歳4名、85歳5名、86歳4名、87歳1名、88歳0名、89歳1名、90歳1名。当然ながら80~83歳の「若手」が多い。これまで九州スーパーシニアに出場した最高齢は、第5回大会(2019年)のエージシュートで有名な植杉乾蔵(球磨CC)の95歳。彼の生涯のエージシュート数は1472回である。

今大会の最高齢は1933年3月30日生まれ、90歳の安藤喜三郎(大分中央CC)。唯一の90歳だった。安藤はこの大会の常連で、第1回から第9回まで欠かすことなくフル出場。優勝こそないものの、3位が2度あり、「九州スーパーシニアの顔」とも言うべき存在だ。今回は43・44の87で回り、通算1420回目のエージシュートを達成して28位だった。「よう打った。つまらんショットが多かった。3パットも6回。エージシュートだけは何とか、ね」と不満の言葉を並べた。90歳とは言っても、自分のゴルフに妥協がない。それが安藤のモチベーションとなっている。

90歳の安藤喜三郎(大分中央CC)

安藤のこれまでのキャリアをめくってみる。大分県豊後高田市で生まれ、地元の豊後高田高を卒業後、北九州市の企業に就職。大分への転勤を機に39歳からゴルフを始める。元々「体を動かすのが好き」で水泳、バスケット、登山、アイススケート、それに社内野球などでも汗を流した。クラブを握って1週間練習しての初ラウンドは「121」。それから5~6回目のプレーで80台をマークしたというから素質もあったのだろう。ただ、サラリーマンという職業柄、ラウンドはほぼ土日祭日に限られていた。

65歳の定年を過ぎてから本格的に競技ゴルフに取り組むようになるのだが、巡り合わせにも恵まれる。「練習場を経営していた友人から『あんたやってくれんか』と頼まれて」と経営に携わるのだが、なんと言っても練習場である。安藤は毎日200~300球を打てる環境に入った。自宅ではプレッシャーに負けないためのアプローチ練習を工夫する。大きな窓ガラスの前方に座布団をぶらさげ、それをターゲットにアプローチする。もし手元が狂えばガラスは一瞬にしてガシャン。こんな努力が花開く日が訪れる。

安藤本人が「69歳から73歳の頃が最も調子が良かった。賞も7つくらいもらった」と振り返る絶好調時の70歳(2003年)にはグランドシニア選手権の大分、九州、日本を総なめにした。71歳時の日本グランドシニア(愛知・名古屋GC)では3人のプレーオフに敗れて2位タイ。72歳時の同大会(福岡・伊都GC)では初日パープレー72で2位に2打差をつけて首位スタートしながら最終日は78と崩れて4位に落ちたが、この頃の安藤は勢いに乗っていた。

円熟味を増したプレーはエージシュートにも直結した。「初」は69歳の時に別府ニットーGC(現別府の森GC)で69。さらに70歳時には8回も記録した。その後は着実に増やして、今では年間140~150ラウンドのうちエージショートをミスるのは3~4回程度という。82歳までは白マークのレギュラーティー以上での距離でなければ個人的にエージシュートとして認めていなかったが、以後はゴールドティーからのラウンドも数えるようになった。その数を丁寧にノートにつけ、パソコンにも入力。「来年夏までに1500回を達成したい。家内も『それまでは協力する』」と最大の支援者からお墨付きをもらっている。

昨年、安藤はマイカーを替えた。そのナンバーは「66-99」。「66」はこれまでの自己ベストを意味し、「99」は99歳までゴルフをしたいという意思表示である。90歳の現在でも現役ドライバー。「運転が大好き」とクラブ同様にハンドルを握る。今年の九州スーパーシニアの会場は熊本県で、自宅のある大分県から約150kmの道のりを運転するつもりであったが、「若いもんに任せて」と80歳台の年下の選手に任せた。

安藤はゴルフを「生命みたい」と表現する。自分で黒にんにくやウコンを栽培しながら、健康のためにゴルフとともに歩む。

練習グリーン

コースに来ると、しゃきっとなる

《男子の部優勝》
歴代最年長84歳で初優勝した丹山は元小学校の校長先生(メイン画像左)

まずは初優勝の丹山のコメントをお届けする。「夢としてこうゆう(優勝)のを思うことはあるが、まさかね。不思議だ。ベスト10入りが目標だったし。できすぎ。まぐれ。ラウンドできるかどうかも分からんかったし」と首をひねる。

その理由はこうである。右肩の調子が思わしくなく、脊柱管狭窄症にも悩まされていた。「参加料を捨てるつもりで」とエントリーをしたのは締め切りの1日前。ただ、ゴルフ仲間の瀬戸山英夫(宮崎・レインボースポーツランドGC、80歳)が今大会にデビューするため、4度目出場となる丹山が一緒に行くことを約束していた。出場は微妙な状態で、キャディーさんにも「ハーフでやめるかもしれない」と断っていたほどだが、何とか完走した。

そして優勝である。本人が言うには「力が抜けて良かった」と。ドライバーショットでフェアウエーを外したのは14ホール中3度だけ。みんなが手こずったグリーンも「タッチも合ったし、ラインも出た」と4バーディー(6ボギー)である。これまで3度の成績は19位、17位、昨年は2度のトリプルボギーもあって28位だった。宮崎県内では新聞社やテレビ局主催の大会などで6度の優勝を誇るが、今大会は優勝争いとは無縁。丹山が優勝を不思議がるのも頷ける。

ゴルフとは50歳前に出合った。兄弟と身内から誘われ、鹿児島の桜島CC(閉鎖)でプレー。「ボールの飛び方に感動した」のがきっかけとなり、それからのめり込んだ。小学校の校長を退職し、自己流で腕を磨いた。「テレビがお師匠さん」とYouTubeを見ながらスイングやパットをチェックする。これまでの師匠は杉原輝雄、藤田寛之、宮本勝昌らが並ぶ。「いつもはなまけているけど、コースに来るとしゃきっとなる。60~70歳に負けんように競争する。これがいい」と身長160cm、歴代最年長Vとなる84歳のチャンピオンが不敵に笑った。

年齢より若く見られるのはゴルフのお陰

《女子の部優勝》
ゴルフを66歳から始めた岩切は7年目での栄冠(メイン画像右)

今大会は奇しくも男女とも宮崎県勢が九州を制した。男子の優勝が丹山と知らされ、岩切は「それは良かったですね」と丹山と握手を交わした。面識はないが、同県のよしみである。

岩切も丹山と似たような優勝コメントを発した。「びっくりしました。まさか優勝するとは。優勝するまでは、この大会に出たいと思っていたので、目標が達成できました」。女子の第1回からのVスコアは73、77、78といずれも70台。岩切のスコアは82だっただけに、なかば諦めていたかもしれない。

インスタート。11番でダブルボギーを叩き、続く12番でもボギー。悪い流れを断ち切れずに15番でもダボ。結局、前半は7オーバー43と初優勝には程遠い数字であった。ひと息ついて折り返した3番でバーディーが来ると、その後を4ボギーとしのぎ、後半を39と粘る。2位の土器悌子(佐賀CC、83歳)とは1打差。もし並んでいたら、「年長者上位」という大会規定で、岩切の立場は逆になっていた。

高齢者になると、病気やケガは友達のようなもの。岩切も今年、股関節を痛めた。飛距離を求めて練習しすぎたせいか、支障をきたしたのである。それからはテーピングでしっかり固定して試合に臨む。「股関節が痛いので上半身だけで振るようにしたら『72』。今日もそんな感じ。今年はいい年です」と相好を崩す。男子の丹山同様に「災い転じて福」となった。

ゴルフは友人に誘われて66歳から始める。55歳までは会社員。クラブを持った当初は、どの番手でも100ヤードしか飛ばない。1年間はコースには出らずに、ひたすら練習場でボールを打ったという。これまでのベストスコアは「70」。

「ゴルフで友達がいっぱいできるし、いろんな大会に行くのが楽しみ。いろんな所においしい物を食べに行けるのもゴルフの魅力。年齢より若く見られるのもゴルフのお陰」。若さの秘訣はゴルフにありー。

来年、九州スーパーシニアカップは区切りの10回目を迎える。元気な超ベテランたちは、これからもフェアウエーで元気な声を弾ませる。

 

九州ゴルフ連盟 HP

 

取材/文・森本博樹(情報シェアリング部会委員)

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