『People』第3回 ゴルフは私たちの生きがい。出会えて本当に良かった:WAGスクール卒業生インタビュー

「人生100年時代」に突入していく中で、高齢者の健康維持・増進に貢献するゴルフへの注目はますます高まり、2018年にはゴルフが認知症予防に効果があるという研究結果も発表された。当時の研究に「65歳以上のゴルフ未経験者・初心者」として参加し、レッスンなどを受けたメンバーが、現在もWAG(旧ウィズ・エイジングゴルフ協議会)スクール卒業生としてグループを作ってゴルフを続けているという。グループを牽引する佐藤秀範(73・写真右)さん、なつさん(69・写真左)夫妻と、メンバー最年長86歳の鈴木雪子さん(写真中央)に話を聞いた。

58歳で突然に頸椎損傷 妻の後押しで出会ったWAGスクール:佐藤秀範さん

――ゴルフが認知症予防に効果があるかどうかを実証する研究は、2016年10月から半年間、埼玉県日高市の日高カントリークラブで行われました。高齢者約100名を半分のグループにわけ、ひとつは健康講座を受け今まで通りの生活を送る群と、週1回全24回 ゴルフレッスンを受けたり、実際にラウンドを経験したりする群のふたつのグループにわけ、参加者各自のデータを取る形で進められましたが、佐藤秀範さんはゴルフをする群(WAGスクール)のメンバーの一人でした。

佐藤秀範(以下佐藤)さん 私は以前にゴルフをやっていましたが、58歳の時に頸椎損傷という病気に突然襲われ、一時は四肢を全く動かすことができませんでした。その後はプールでのリハビリなどで体は少しずつ動くようになったのですが、それでも歩くのがやっとという状態でした。

佐藤なつ(以下なつ)さん そのような日々を続けている時に、主人がゴルフの練習に行くと言って出掛けていきました。でも「だめだった。うまく打てなかった」とションボリして帰ってきて…。

佐藤さん それでもプールで歩いて、外も歩いて、スイングの練習も続け、いつかゴルフに復帰したいと思っていました。そのような時に新聞で研究の協力者(被験者)募集の記事を見て、申し込みました。

なつさん 主人は最初のうちこそ、自分は以前にゴルフをやっていたから未経験者でも初心者でもないと、二の足を踏んでいました。でも、今は初心者と同じなのだから、電話で問い合わせてみなさいと後押ししたんです。WAGスクールがなかったらゴルフをしていなかったでしょうし、受け入れてくださって本当に助かりました。

佐藤さん WAGスクールでの半年間は楽しくて、いろいろな人との出会いもありました。私は毎週火曜日に参加していたのですが、スクールの最終日に15人以上いた火曜日メンバーの1人から「これを続けることはできないのか」という声が出ました。その声を受け止めていただき、WAG関係者や日高CCの皆さんが協力してくださり、定期的に集まって練習やラウンドをするようになりました。私はまだ十分に体を動かせなかったのですが、それでもメンバーの方々は受け入れてくれました。そのうちに皆さんは自分のクラブを購入し始めたので、もうやめるわけにはいかなくなったわけです。

卒業生グループで継続 月イチの練習と月イチのラウンド

――グループは具体的にはどのような活動をしているのですか。

佐藤さん メンバーは男性7人、女性6人。月2回集まり、うち1回は練習場、1回はラウンドです。ラウンドは本コースでの9ホールか、ショートコース。ゴルフを始めて間もない高齢の方ばかりなので、18ホールを回るのは体力的にもきついからです。コースは私が皆さんから希望を募ってから妻と下見に行き、ゴルフ場にお願いして回らせてもらいます。薄暮のハーフプレーがあるゴルフ場もあるので、活用させていただくこともあります。また、年3回は日高CCで6~9ホールを回るラウンド会があります。とてもきれいなコースなので皆さん楽しみにしていますし、そのような機会を与えてくれる日高CCには感謝するばかりです。

――日高CCは基本的にカートを使わず歩きなのですが、最年長86歳の鈴木雪子さんも一緒にラウンドされるのですか。

鈴木雪子(以下鈴木)さん はい、私は80歳手前でWAGスクールに入るまでゴルフ場に行ったことがなく、クラブを握ったことさえなかったので、日高CCを見た時はすごくきれいで本当に驚きました。WAGスクールに申し込んだ時は不安でしたが、始めてみたら面白くて。私は健康のために水泳を30年以上続けているので、体だけは丈夫なんです。毎日のウォーキングも欠かしません。

佐藤さん 80歳手前からゴルフを始める方は珍しいし、尊敬しています。それが出来るのもトレーニングをしっかり積んでいるからだと思うし、今日も練習場に来る前に近くの一周2・5㌔の公園を歩いたといいます。

鈴木さん 皆さんについていくためには、それくらいの努力は当たり前だと思っています。それができるのもゴルフがあるからだし、ゴルフをするのが本当に楽しいし、この会が本当に楽しいから続けていられます。

この日の練習会は12名が参加

「ゴルフのおかげで年齢差を感じない」最年長86歳の鈴木雪子さん

――練習後にランチを一緒に食べるのも皆さんの楽しみの一つだと聞いています。

佐藤さん 3年くらい前から、練習後にランチ会もするようになりました。というのも、それまでは次回の練習やラウンドの打ち合わせをメールでやっていたのですが、一緒に顔を合わせて食事をすることでじっくりと話し合いができるからです。言葉のキャッチボールは大切です。また、膝などが痛くて練習を欠席した方とも、顔を合わせることができます。これは良かったですね。

鈴木さん 私なんか年齢が離れているので、本来なら一緒に食事しても皆さんとお話しすることもできないと思います。でもゴルフのおかげでそのようなことを感じることもないし、今では生きがいになっています。

なつさん 鈴木さんは練習後の後片付けなども率先してやってくださるし、みんなの中でフットワークも一番いいと思います。私にとっても目標です。

鈴木さん 認知症の兆候が出ないのも皆さんのおかげだと思いますし、これからもご迷惑をかけないように、まず足を鍛えなければいけないと思っています。そのためには水泳と、80度で15分入るサウナ、そしてウォーキングは欠かさないように続けていきます。

――佐藤さんも夫妻でゴルフを楽しみ、やはり生きがいになっていますよね。

佐藤さん 最近の妻は僕よりもゴルフに熱心で、練習に行こう、行こうとせっつかれています。

なつさん 私も20年くらい前にゴルフをやったことがありますが、その時はスイングのことなどに主人がうるさくて、私との考えが一致せず、コースに出ることがないままゴルフはやめていたんです。でも3年前に入間市で開催されたWAGスクール(研究時のWAGスクールのメソッドを取り入れた新たなスクール)に入って再開しました。今は主人も何も言わないし、それどころか私の方が飛ぶこともあるんですよ。

佐藤さん いや、昔のことを根に持たれると大変です(笑)。当時の私は天狗になっていたんですね。病気をして、体というのは思うように動かないものだということを知って、あのころの妻の気持ちが分かるようになりました。

率先して片づけをする鈴木さん

メンバーにストレスを感じさせず引っ張るリーダーがいれば卒業生グループはできる

――高齢化社会を迎える中で、今年から新たに始まる「JGA WAGスクール」を開催するゴルフ場や練習場が全国に広がり、佐藤さんが引っ張る卒業生チームのようなコミュニティが各所に誕生すれば、人生を一層に楽しく価値あるものとして過ごせる人がもっと増えると思います。そのために必要なことは何でしょう。

佐藤さん WAGスクールが広がれば、その卒業生による10人、20人のグループができます。その中で利害関係などに関係なく、メンバーにストレスを感じさせず引っ張っていくリーダーがいれば、楽しいグループになると思います。WAGスクールに参加しても、そこで終わってしまったらもったいないじゃないですか。せっかく見ず知らずの人がゴルフを通じて知り合ったのです。人と出会う機会というのは少ないし、その中でずっと付き合うことができる人との出会いはもっと難しい。まずは、そのような機会をいろいろなところで増やしていってほしいと思います。そして早朝にスタートして6~9ホールを回って昼前にホールアウトできるような、高齢者に優しいプランを考えていただけるゴルフ場が増えていけば、もっと嬉しいですね。

 

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構成・鈴木遍理(情報シェアリング部会委員)

 

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