コースに出た経験のない女性たちにゴルフの楽しさを伝え、底辺拡大を謳って2021年にスタートした「福岡ゴルフアカデミー~ For Ladies」も今年で6年目を迎えた。卒業生は100人を超え、アカデミー生によるコンペも4回。九州ゴルフ連盟(GUK)の協力の下、福岡県南部24コースの支配人が先生となり、地道にコツコツと授業を重ねた成果が徐々に形として表れ始めている。
アカデミーの立ち上げに尽力した宮川周三氏(当時:志摩シーサイドカンツリークラブ支配人、現:茜ゴルフクラブ支配人)、今でも生徒とのつながりが深い山根蓉矢氏(当時:福岡センチュリーゴルフ倶楽部支配人、現:小郡カンツリー倶楽部キャディーマスター)、現在GUKのゴルフ活性化委員会委員の松尾直樹氏(現:太宰府ゴルフ倶楽部支配人)にアカデミーの現状や今後の目標などを伺った。
ーー当時、女性ゴルファーを取り巻く環境についてどのような課題を感じましたか?
宮川 このアカデミーを立ち上げるきっかけは、私の妻の友達が「ゴルフをしたいけど、どうしたらいいの」という相談から始まりました。最初、私は「練習場に行けばいい」と答えていたのですが、ゴルフ場を見せて、簡単な基本やエチケット、マナーを教えて、その後、練習場へ行ったら、と思いました。九州ゴルフ連盟の活性化委員もしていましたし、彼女たちはゴルフ自体をほとんど理解していないのですから、「ゴルフ場はこんな所だよ」と教えたかったのです。クラブを握ったことのない女性ゴルファーは何から始めたらいいか分かりませんよね。ですから入口を提供してあげよう、と。
山根 彼女たちはゴルフ場の前を通ることはあっても、中に入ることはほとんどありません。映像なんかでは想像できても、敷居が高いというか、玄関が入りにくいと感じていました。
ーー立ち上げた時に苦労したことや印象に残っている出来事などはありますか?
宮川 実際、アカデミー創設に反対の支配人もいました。かなりの負担になりますからね。そうしたら、福岡カンツリー倶楽部の樋口秀樹支配人が「(宮川さんと)申込者が1人や2人だけだったとしてもやろうよ」と言ってくれたんです。それで前に進むことにしました。それでも、彼女たちがプレーする際のメンバー料金の「壁」がありました。「どうしても協力してもらいたい。足並みを揃えることが大切です」と相談したり、頭を下げたりして何とか始めることができました。今は福岡県南部24のゴルフ場を含めて40コースくらいでメンバーフィーでできるようになりました。

左から:小郡カンツリー倶楽部キャディーマスター・山根氏、茜ゴルフクラブ支配人・宮川氏、太宰府ゴルフ倶楽部支配人・松尾氏
山根 1回目は、どうしたらいいか分からず、手探り状態でした。3週間(アカデミーは10~11月の連続する3回の土曜日に行われる)で3回の参加必須の条件は、難しいのではないかと感じていましたけど、いざ終わると「あっという間で参加者みんな楽しそうだったな」と喜びました。
【各コースをメンバー料金+1000円で】
アカデミー会員の大きな特典の1つが、福岡県南部地区加盟の24コースでは、1年間、平日メンバーフィー+1000円、土日祝日が同+3000円でプレーできるというもの。特典を利用するのは数人しかおらず、「期限が切れる頃に使うという方が多かったですね。本人たちも技術、エチケットやマナーができていない、と分かっているのでコースに出るのは遅くなったのでしょう」と宮川支配人。プライベートでのコースデビューは少々時間がかかったようだ。
ーー立ち上げから約5年間続いている中でどのような変化や成果を感じていますか?
山根 今、月イチくらいでラウンド会やレッスン会などをやっているんですが、最初は卒業生のアフターフォローをやっておらず1期生の方から「個人レッスンをして欲しい」と要望があり、熱心にうまくなりたい、というのが伝わってきました。
宮川 生徒たちを集めやすくなりましたね。卒業生たちが「アカデミーは素晴らしいから行ってごらん」と知人などを誘ってくれるんです。講習の時に1、2期生が中心となって受付や球拾いなどのお手伝いをしてくれて、段々とつながりの輪が広がり、みんな仲良くなりました。
【福岡ゴルフアカデミー入会条件】
❶18歳以上の女性❷福岡県在住❸ゴルフ場での経験のない方(練習場での練習は問題なし)❹アカデミーが実施する3日間を全て受講できる方
ーー「福岡ゴルフアカデミー~ For Ladies」の現在の開催数、卒業生人数、卒業生によるコンペの回数、参加者のゴルフ継続状況を教えて下さい。
山根 これまでの開催数は6回。卒業生は114人。コンペは4回です。継続状況は70~80%くらいでしょうか。当初は半分残ればいいかな、と考えていたんですが、予想以上でした。
ーー立ち上げから現在に至るまで運営方法やプログラムの内容で変えたことなどはありますか?
山根 最初は年2回開催していたんですが、フォローを徹底するために1回にしました。2期生の場合、様々な事情が重なり、アフターフォローができなくなって、彼女たちの活発さが消えて行ったんです。「これはいかん。卒業生を大事にしよう」とアフターフォローをしっかりするために1回にしたんです。
松尾 異動などで支配人たちが代わって、最初から係わっている支配人もいれば、そうでない人もいる。私も去年、加わりました。参加する支配人とそうでない支配人と偏りがあるので、現在はグループを作って振り分けてもらい「この時は必ず出席して下さい」と頼んでいます。結果、どうなるか分かりませんが、とにかく一度やってみようと。
宮川 この会のおかげで一番まとまったのは支配人会でした。支配人も異動があり代わっていくんですが、みんなが輪になって、まとまりましたね。
ーー現在の運営で女性にゴルフを続けてもらう上で大切にしていること、参加者とのコミュニケーションで意識していることはありますか?
宮川 入会から申しますと、必ず個人1人で電話で参加するように徹底しています。親子とか、2~3人の友達ではNGです。1期生20人のうち、やめたのはこの友達と親子です。1人で来るのは勇気がいりますが、1人で申し込むのは「新しいものをやってみたい」という意気込みが違うんです。複数人での申し込みは断りました。
山根 支配人は皆ゴルフが得意とは限りません。得意ではない人は教えることを遠慮しがちです。彼女たちからすれば、どの支配人もゴルフの先輩ですし、うまい人ですから「遠慮する必要はありません」と伝えています。自分の体験で教えればいいわけで、ウソを教えているわけではありませんし、彼女たちは教えてもらえることが嬉しいんです。
宮川 「プロにやってもらったら」という支配人もいましたが、そうではありません。生徒たちと自分たちの距離感を保っておくことが大切なんです。もっと上手になりたい方がプロから教えてもらえばいいんです。
ーー参加される方に共通する特徴はありますか。また参加者の反応などで印象に残っているものはありますか?
宮川 端的に言うなら時間とお金に余裕があるということじゃないでしょうか。子育てが終わって時間がある。子どもが高校生くらいになると、昼間の時間を使えますからね。40代あたりがベストじゃないでしょうか。
山根 ゴルフが生活の一部になって来た方が増えて来たなと思います。ゴルフと出合うまで旦那さんが誘っても家から外に出なかった奥さんが、「ラウンドの予約を取ったよ」と逆に旦那さんを誘うケースもあります。また、旅行がゴルフの一部になって、ゴルフをするために旅行に行くということも聞きました。ゴルフにお金と時間を使う人が増えたなという印象です。
ーー女性がゴルフを始める・続けるために必要だと感じることは何でしょうか?
宮川 先ほども言いましたが、女性が始めるためにはゴルフ場が入口になることです。ゴルフショップに行って、かわいいウエアは分かっても、ボールマーカーの使い方は分からないし、ゴルフクラブのこともショップの人に尋ねにくいでしょう。ですから、こういう会がたくさんあったらいいな、とつくづく思います。
山根 私は、1期生から3期生までは、受け持ったチームの生徒とは、LINEの交換をしており、4期生から卒業生全員ともLINE交換をしています。所用ができてチームの担当支配人が来られなくなったり交代などがあり、生徒たちが自分の担当の先生が分からなくなったケースがありました。今では、卒業生全員とLINE交換しており、個人的なレッスンを依頼する方、「上手くなるにはどうしたらいいか」「どのゴルフ場や練習場へ行けばいいか」などの質問もきます。ゴルフを続けてもらうには、彼女たちに寄り添ってあげて、フォローをしっかりしてあげることが大切でしょう。
宮川 極端な表現ですが、「ゴルフ場が犠牲になってでも、やらなければ」というくらいの覚悟がいるんじゃないでしょうか。
ーー今後の目標、取り入れたい企画などがあれば教えて下さい。
松尾 将来的には会が大きくなって、大きなコンペをやりたいと考えています。100人を超えたらと。土台はできてきたので、男性たちにも広げたいとは思いますが、現状では女性をもっと増やそうと努力しています。ただ、キャパの問題や、資金の面もあります。協力いただいているコースに少しでも還元できればと思っています。
【第4回福岡アカデミーゴルフコンペ】
5月30日(土)に、卒業生27人による「第4回福岡アカデミーゴルフコンペ」が太宰府ゴルフ倶楽部(福岡県太宰府市)で開かれた。サポート役として九州ゴルフ連盟・ゴルフ活性化委員会、福岡県南部地区支配人会のメンバーら13人が参加。カートの運転手をしながら、プレーヤーにレッスンをしたり、エチケットやマナーを教えたりして9ホールを回った。このコンペにも出場し、第1期卒業生で会員権を購入するなどゴルフに夢中の濱野和江さんにアカデミーの魅力を尋ねた。
ーーアカデミーに参加したきかっけは?
濱野 ゴルフ練習場に行った時に、そこの人が「こんなのがあるよ」と紹介され、それで翌日、電話して入会しました。
ーー参加前のゴルフのイメージと、参加後(現在)の印象は変わりましたか?
濱野 ゴルフには知っている人や、ゴルフをしていたパートナーとしか行かないだろうと思っていた。ところが、アカデミーに入って、いろんな人と回って、すごく楽しいです。
ーーゴルフを通じて、ご自身の生活や考え方に変化はありましたか?
濱野 土日、私は自宅でひたすら寝る人でしたが、ひたすらゴルフに行きたくて仕方がなくなった。変わりましたね。仕事が終わっても、「今日は練習に行けるかな」と思ったりすることがあります。
ーー現在のゴルフをする頻度は?続けられている理由は何でしょうか?
濱野 年間50~60ラウンドするんですが、アカデミーの人がいるからだと思います。
ーー今後チャレンジしてみたいことや、目標があれば教えてください。
濱野 「90」を切りたい。「93」がベストです。ハーフ「43」も切ってみたい。

構成・森本博樹(情報シェアリング部会委員)


