96歳・奈良のご長寿スーパーゴルファー:矢尾賢一さん

スポーツ界にはサッカーの「カズ」三浦知良(58)、スキー・ジャンプの葛西紀明(52)ら50歳を過ぎても現役選手として活躍する「レジェンド」アスリートがいる。

ゴルフは生涯スポーツといわれるだけに、80歳の「傘寿」を過ぎてもコースに出る愛好家は珍しくないが、96歳になって週1ペースでラウンドするとなると、さすがにそうはいないだろう。

奈良市在住の矢尾賢一さんは、まさに「人生100年時代」を地で行く。病気やけがで入院したことはこれまで一度もなく、薬も全く服用していないそうだ。めったに風邪もひかず、健康そのものの、ご長寿スーパーゴルファーである。

 

矢尾さんは名匠・上田治氏設計で県内では2番目に古い名門・飛鳥カンツリー倶楽部(奈良市)のメンバー。ゴルフ場が正式にオープンする1959年(昭和34年)より以前、54年頃からプレーしていたという。以来、ずっと飛鳥CCでプレーを続けている。昭和3年10月生まれ。古都・奈良の「いにしえゴルファー」は、「ゴルフさまさま。ゴルフのおかげで健康で長くいられる」という。

 

3月下旬の取材当日は、春らしい穏やかな陽光を浴びながら91歳、80歳の男性、74歳の女性と、ゴルフ仲間で和気あいあいとラウンド。前半インを59で回り、「今はドライバーはええとこ100ヤード程度。もう少し飛んだら楽やけど、距離が出ないからチョコン、チョコンと球を転がしているだけ。(パー4の)ミドルで4オンか5オンして1パットか2パット。ハーフで良くて52、53。55~56が多い」と謙虚に話す。とはいえ、長年コースで磨いたドライバーショットは曲がらず、真っすぐ飛ぶから、OBをたたくこともない。最近はコースの練習場にもめったに足を運ぶことはないそうだが、肩に力は入らず、枯淡の境地のゴルフとでもいえようか。

 

自宅からコースまで、年明けまでは自分で車のハンドルを握って通っていたという。「免許はまだ返納していないけど、2月から運転はしていない。今は(同じメンバーの)息子が送り迎え」。それでも「医者にはほとんどかかっていない。年に1回の健康診断では全部正常値」と何事でもないように話す。現在、飛鳥CCには90代でプレーを続けているメンバーが3人いるが、「いつの間にか最年長になった」とほほ笑む。

目標は100歳までプレーすること

 

メンバーとの親睦会「若松会」「大昭会(以前は大正会)」「禄寿会」では後輩を引っ張り、ゴルフ研修と称して兵庫・洲本CCに足を延ばしたりもしている。飛鳥CCの岡山孝次社長・総支配人の話では、「矢尾さんは耳も目もいいし、記憶力もしっかり。若松会のメンバーには自ら電話連絡したりしている」そうで、「メンバーからは『オバケでっせ』という声も」とみんなが驚かされている。

当然、健康長寿の秘訣は?とよく聞かれるが、「別段、何にもしていない。食事は家内がつくってくれるものを食べているだけ。ゴルフをしない日は散歩くらいはするけど」と矢尾さん。自宅では毎日のんびり。週末はトーナメント中継をテレビ観戦するという。アルコールは、会社員時代は付き合いでずいぶん酒席に顔を出したらしいが、最近はたまにビールを飲む程度。「言うたら、三度三度の食事を食べて、夜更かしはせずに規律正しく、きちっと生活することが大事かな」。健康維持に気をつけているといえば、周りに対し口にしているのが「コケるな」「風邪ひくな」。生駒矢田丘陵にあるコースは眺めがいいが、アップダウンもあるだけに、カートを降りて斜面や階段などを歩くときは段差に注意し、雨の日はプレーしない。「コケたら骨が折れる。手をついたらポキン。寝たら体力も落ちて病気のもと。ゴルフができんようになる」と転倒しないよう用心している。年を重ね、ゴルフが一番の楽しみだと言い、「目標は100歳までプレーすること」と意気盛ん。実際に矢尾さんの姿、ショットを見ていると、苦もなく目標をクリアしそうな気もする。

 

ところで、岡山社長によると、伝統ある飛鳥CCには親子3代のメンバーも多く、「アットホームな雰囲気」。昨年9月の敬老の日に開催した敬老祝賀競技には70歳以上のメンバー151人が参加し、そのうち70歳代が101人、80歳以上は50人を数えた。メンバーの平均年齢は70歳。ゴルフはコロナ禍でも「3密」避けられるスポーツであることから若者も増えたそうだが、全国のゴルフ場では高齢化が確実に進んでいる。関西ゴルフ連盟(KGU)の監事も務める岡山社長もゴルフ人口の減少を憂慮する。「ゴルフ界では何年も前から(団塊世代のゴルファーがゴルフ場から遠ざかる)2025年問題が懸念されていたが、ゴルフ人口を増やさないと大変なことになる」。岡山社長はゴルフ人口を増やすため、初心者向け教室を開くほか、若者の関心を引こうと同ゴルフ場のクラブハウス内に、離島の天才少女が主人公の人気ゴルフ漫画でテレビ放映もされた「オーイ!とんぼ」コーナーを16年に設け、原画30点ほどを展示、単行本もそろえている。

「ゴルフは楽しい、というメッセージが伝われば。ゴルフ活性化もそうだが、ゴルフ人口を増やすことが大事」。矢尾さんの存在は、ゴルフの楽しさ、健康長寿の原動力ということをアピールするお手本のようなもの。

老若男女、一人でも多くの人がゴルフに親しみ、コースに足を運ぶことを願っている。

 

(情報シェアリング部会委員 吉良幸雄)

関連記事

  1. 《シリーズ対談》第7回ゴルフと健康増進 ゴルフは心の栄養 野口五郎さん

  2. 「Hello,Golf!社会科見学プログラム」atヒルズレディース森ビルカップ:JLPGA

  3. 第6回小学生ゴルフ体験会と記録会を実施(2011年6月5日)

  4. 岡山県スナッグゴルフ大会兼スナッグゴルフ対抗戦岡山県予選会を開催(2022年5月21日)

  5. 笠間市の小学生が社会学習見学でトーナメントを観戦:JGTO

  6. 「ACNチャンピオンシップゴルフトーナメント」大会初日に地元三木市の小学生がトーナメントの舞台裏を社会学習見学(2023年10月5日):日本ゴルフツアー機構

最新のゴルフ振興情報を

メールで
お届け!

今すぐ登録

メール登録

Translate »