自立した女性にゴルフはとてもいいスポーツです。チャレンジしてください アマチュアゴルファーのレジェンド、第1回日本女子グランドシニア選手権優勝の三木逸子さんインタビュー

25歳以上が競う日本女子ミッドアマチュアゴルフ選手権を3勝、50歳以上の日本女子シニアゴルフ選手権を8勝……。アマチュアゴルフのレジェンドである三木逸子さん(68)が、2024年10月31日~11月1日に埼玉県の武蔵カントリークラブ・笹井コースで開催された第1回日本女子グランドシニアゴルフ選手権で優勝し、60歳以上のゴルファーの初代女王に輝いた。現在は高知県の明徳義塾中学・高等学校でゴルフ部監督も務める三木さんに、世代をまたいで活躍を続けられる秘訣などを聞き、女性ゴルファーにエールを送っていただいた。

初日はベストスコア69 パーオンできなかったのは2ホールだけ

――第1回日本女子グランドシニアゴルフ選手権の優勝、おめでとうございます。初日にいきなり69のベストスコアをマークし、最終日はスコア80のトータル5オーバーで逃げ切り。関東女子グランドシニアゴルフ選手権を連覇するなど実力者の角田里子選手に3打差をつけての優勝でした。

三木逸子さん 戦略的なコースで難しかったですが、整備も行き届いてとても素晴らしく、ここでゴルフをさせてもらっていることを嬉しく思いながらプレーしました。グリーンの攻略は十分に出来ませんでしたが、初日はたまたまショットが良くてピンにからみ、パーオンできなかったのは2ホールでした。パターも運よく入ったのがいくつかあり、69というスコアを出すことができました。

――距離は5,600ヤードくらいで、日本女子シニアゴルフ選手権より400ヤードほど短いセッティングでした。

三木さん 距離は私に合っていたというか、私はフェアウェイウッドやユーティリティが苦手なので、アイアンで攻められる距離が残ったのは良かったです。全体的にフラットなホールが多く、そのままの距離が残るような感じがして、その分難しいところもありましたが、何とかアイアンで対応できました。

――今の女子選手はフェアウェイウッドやユーティリティをよく使いますが、逆なのですね。女子のグランドシニアはこれまで各地区連盟で開催されていましたが、全国大会は今回が初めてでした。

三木さん 私くらいの年齢になると出場できる大会は限られてくるので、グランドシニアの全国大会が女子にもあればいいなとは思っていました。

――やはり優勝を狙って臨んだのでしょうか。

三木さん これまで日本女子シニアゴルフ選手権を8回優勝しているので、その経歴からいうと、やはり1度は勝ちたいと思っていました。それも第1回大会ということで、本当に一所懸命に練習して臨みました。

――日本女子ミッドアマチュアゴルフ選手権でも3勝を挙げていますし、やはり勝ち方を知っていると思ってしまいます。

三木さん そんなことはないですよ(笑)ミスをしながらも、何とか勝っているという感じです。

試合の相手は自分が設定した目標スコア それに近いスコアで回れば優勝に手が届く

――リーダーボードもなく、他の組の選手のスコアがなかなか分からないアマチュアの試合で、どのように自分をコントロールしているのでしょうか。

三木さん ラウンド中は自分が設定した目標スコアを意識して、それに近いスコアで回れば優勝に手が届くかなという感じでプレーしています。自分のスコアとの戦いと言えるかもしれません。

――グランドシニアを制した直後には広島・西条コースでの日本女子ミッドアマチュアゴルフ選手権にも出場し、2日間計15オーバーで36位タイでした。

三木さん 初日にショートパットをいくつか外してしまい、スコアを作れず79。2日目は80でした。この年齢になると日本女子アマチュアゴルフ選手権は難しいのですが、日本女子ミッドアマチュアゴルフ選手権は昔から出場させていただいています。上手な方たちと回って勉強したいと思いながらプレーしています。

――若い選手は飛距離も出ますし、その中で一緒に試合を戦っているのはすごいと思います。

三木さん ミッドアマでは若い人に飛距離は置いていかれます。シニアでは若干飛ぶ方かなと思うのですが、それでも年が若い選手はどんどん飛ぶようになっているので、最近はよく置いていかれるようになりましたね(笑)

――その日本女子シニアゴルフ選手権でも、今年は通算12オーバーで10位タイ。ベスト10入りしました。

三木さん 今回のシニアの成績には満足しています。シニアになったばかりの頃は勝ちを意識していましたけど、今は出場したいと思う大会なので(上位10位に与えられる)翌年のシード権をいただければ有り難いです。昨年は初めてシードを落とした(15位タイ)ので、特にそう思いました。

ゴルフを始めたのは34歳 こんなにうまくいかないスポーツはなかった

――ゴルフを始めたのは34歳ということで、遅いですよね。

三木さん 公立中学校の教員をしていた時に、ゴルフの好きな先生方から、テスト休みの時に遊びに行かないかと誘われたのがきっかけでした。それまでは26歳まで陸上の砲丸投げ、その後の4年間はバスケットボールの1部リーグでプレーし、さらにその後の3年間は世界大会もある本格的な綱引き競技をやっていましたが、ゴルフは難しいというのが第一印象でした。思い通りにボールが飛んでくれなくて、ダフったり、トップしたり、ドライバーはとんでもない方向に飛んで行ったり…。それまでいろいろなスポーツをやってきた中で、こんなにうまくいかないものがあるんだと思いました。でも楽しかったので必死に練習し、コーチはつけずに雑誌やテレビを見ながら独学で学びました。

――教員生活を続けながらなので、練習時間を作るのは大変だったのでは。

三木さん そうですね。時間ができた時は何百球も打ち込みましたが、バレーボール部やバスケットボール部の顧問を務めていたので、それらを終えてから練習場に行きました。練習場は午後10時に閉まるので、ぎりぎりに飛び込んでいましたね。

――それまでのスポーツ経験はゴルフに役立ちましたか。

三木さん 砲丸投げは、瞬発力やインパクトの強さを求めるという点で、ゴルフと共通点があると思います。JLPGAツアーで24年に初勝利を挙げた佐藤心結プロも中学時代は砲丸投げをやっていたと聞いたので、私と一緒だなと思いながら見ています。

――年を経てからの練習には変化がありますか。

三木さん 女子ミッドアマを勝ったころから、練習のやり方は変えています。それまでは200球とか300球を打つ時もあったのですが、疲れが出るようになり、毎日を50球とか100球打つようにしました。少ない球数でもいいので毎日打つようにして、それが良かったですね。また、女子ミッドアマを勝った後にJGAナショナルチームの強化コーチを10年ほど務めさせていただき、その時に他の委員さんが選手に教えるのを聞いて、コースマネジメントの勉強にもすごくなりました。

――ちなみに私のような一般ゴルファーが60歳を過ぎてもスコアを維持、あるいは良くするためには、どのようなマネジメントが大切なのでしょうか。

三木さん 無理をしないことでしょうか。届くか届かないか微妙な距離でもピンを直接狙ってしまうことがありますよね。私もそのような失敗をしてきたのですが、例えばバンカー越えにピンが切られているような時は花道方向に打つとか、バンカーの手前に置くとか、とにかく大たたきしないことが大切です。ただ、ホールによってピンを狙えるところはしっかりと狙います。

ゴルフをうまくなりたければ、礼儀やマナーをしっかり身に付けなければいけない

――現在は明徳義塾のゴルフ部監督として中学生、高校生の女子を中心に教えていますが、女子を指導する際に心掛けていることはありますか。

三木さん うちはゴルフを始めたばかりの生徒が多くて、基礎からコツコツと教えています。ただ、男子と違って女子は時間がかかります。男子はアドバイスをするとすぐに反応して出来るようになるのですが、女子は何度も同じことを繰り返し、少しずつ出来るようになっていくので、そのことを念頭に置いています。

――マナーなどの指導も行うのですか。

三木さん 明徳義塾ゴルフ部は30年以上続いていて、マナー指導に関しては厳しいです。ゴルフは大人の社会に入っていくことも多いので、上手になりたければ礼儀やマナーをしっかり身に付けなければいけません。また、ゴルフは性格が出るスポーツでもあり、一緒に一日中ラウンドすれば相手の性格が分かってくるという側面もあります。3人とか4人でプレーするスポーツなので、大人と回る時でもジュニア同士であっても、これからも一緒にラウンドしたいと思われないと、そこで止まってしまいます。だから挨拶をしっかりするとか、言葉遣いに気を付けるとか、そういうことをしっかり出来れば、ゴルフ自体も落ち着いてくると思います。

――部員は初心者が多いということですが、女子がゴルフを始めるきっかけはどのようなことが多いのでしょうか。

三木さん うちに来る生徒は、親御さんが子供にゴルフをやらせたいというケースが多いです。中学、高校と6年間指導できるので、ある程度の実力はついていきますから。その間に生徒も自分がどのレベルまで行きたいのか考える時間はあり、その中から将来はプロになりたいという生徒も出てきますし、大学に行っていろいろな勉強をしてからゴルフを生かす仕事に就きたいと考える子もいます。

――学生に限らず、ゴルフを始めても途中でやめてしまう女性も多くいます。それはどのような理由からでしょう。

三木さん 金銭面であったり、教えてくれる方との関係であったり、様々だと思います。特に女性は男性と違い、仲間からゴルフに入っていくことが多いです。最初は会社の上司や親に勧められてゴルフを始めても、大人になると一緒にやる仲間が必要ですよね。女性の仲間がいれば続けやすいのですが、そうでないと男性が多いスポーツなので、男性との力の差を感じて威圧されたりしてやめてしまうケースもあると思います。女性同士で回ることができる機会が多ければ、もっと続ける人も多くなるのではないでしょうか。

夢みたいな大会 2025年に日本女子シニアオープンゴルフ選手権 開催

――競技としては、2025年に「日本女子シニアオープンゴルフ選手権競技 太陽生命 元気・長生きカップ」が5月1~2日に千葉県の東急セブンハンドレッドクラブ・東コースで開催されます。45歳以上の女子シニア世代初のナショナルオープンです。

三木さん 夢みたいな大会ですよね。これまで日本女子オープンゴルフ選手権に3回出場させていただきましたが、素晴らしい大会でした。そのような大会が、年齢が上がった方々にも出来ればいいなと、ずっと思っていました。シニアを超えてグランドシニアになっている私が、そのレベルでゴルフが出来るか分かりませんが、1度くらいは参加できればいいなと思います。

――最後に、女性ゴルファーや、これからゴルフを始めたいと思っている女性に、三木さんからメッセージを

三木さん 今は自立した女性が多くなりました。その中から仕事以外に見つけられる趣味として、ゴルフは体も動かしますし、とてもいいスポーツだと思います。ぜひ、チャレンジしてください。

 

構成・鈴木遍理(情報シェアリング部会委員)

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