これからの100年のために JGA池谷会長・山中専務理事インタビュー

日本ゴルフ協会(JGA)は2024年、創立100年の節目の年を迎えた。一昨年、池谷正成会長が就任して以来、JGAはさらにゴルフ振興の歩みを進めようとしている。池谷会長と山中博史専務理事に、2023年を振り返ってもらうとともに、次の100年に向かう一歩目の方針、考えを訊いた。

――2023年は、新型コロナも感染法上の第5類に分類が引き下げられ、様々な社会活動がほぼノーマルな状態になりました。まず、昨年を振り返っていただけますか。

池谷会長  一昨年(2022年)7月に会長を引き受け、同時にゴルフの普及・振興に力を入れることにしました。昨年が実質コロナからの「振興元年」で、様々なことに取り組んできました。

山中専務理事  まずはゴルフ振興推進本部(以下振興本部)を立ち上げ、JGA、8つの地区連盟、さらにプロ3団体や用品協会、練習場連盟などにも入ってもらい、ゴルフ界が一丸となってゴルフの普及、振興に取り組む体制を作りました。また、振興本部内に3つの部会を立ち上げました。情報シェアリング部会、ゴルフと健康部会、女性とゴルフ部会です。昨年、各部会とも具体的な活動に取り組み、一年目としては、まずまずの活動が出来たと思っています。

またゴルフ振興というのは、日本だけでなく世界のゴルフ界共通の大きなテーマであり、実際8月には、R&Aの方々が来日し、R&A主催のジャパンゴルフサミットが開催され、ゴルフの普及・振興に関する多くのことが話されました。

池谷会長  R&Aサミットには100人ほどが集まり、私も参加しました。新たな発見や学ぶことが多かったですね。

再認識したのは、R&Aは日本を非常に大切な存在と思っていてくれているということです。R&Aは、アメリカ合衆国とメキシコ以外の世界のゴルフ界を統括していて、日本もその傘下にあります。R&Aからすれば、日本はゴルフ場の数とゴルファー数で、いずれも世界第2位のゴルフ大国ですので、自分たちが持っている知見や経験、ノウハウを日本とも共有し、さらにゴルフを盛んにさせたいという思いが強いのだと思います。

R&Aは日本だけでなく、アジア諸国にも大きな注目を寄せています。プロもアマチュアの選手も日本や韓国や台湾、さらに最近ではタイの選手も世界中で活躍しています。中国も優秀なゴルファーが現れ、非常に大きな広がりになってきていて、日本を中心にR&Aはアジア地域のゴルフの普及・振興に力を入れているのが感じ取れます。

少し驚いたのは、R&Aは、単にゴルフ場に行くゴルファーだけではなく、シミュレーションゴルフや練習場にしか行かないゴルファーや、ゲームのeスポーツを楽しんでいる人もポテンシャルのあるゴルファーとして捉え、我々のスコープよりも広い視野でゴルフ振興を考えています。彼らは、日本に対し、そのような分野にも振興の輪を広げていきませんかと提案してきています。日本がゴルフ振興に取り組み始めたことを、R&Aも高い関心を持って見ていることがわかります。

振興元年の昨年、様々な事業に取り組む

――具体的には、どのような目標を立てて、振興策に取り組んだのでしょうか。

池谷会長  女性のゴルフへの参画、ゴルフと健康というのが、重要なテーマになっています。これらのテーマは、JGAだけでなく各地区連盟も一緒になって全国で展開していきます。

また日本女子オープン選手権の週には、塩谷育代さん、服部道子さん、馬場ゆかりさん、宮里美香さんの歴代優勝者による女性レッスン会を近隣の練習場で開催し、大変盛り上がりました。このようにプロゴルファーにも協力してもらいゴルフの普及・振興活動を全国で進めていきたいと思います。

山中専務理事  昨年の6月に実施したWGD(Women’s Golf Day)も評判がよく、全国130のゴルフ場や80の練習場で開催し、多くの方に集まっていただきました。

プロ団体にも協力していただき、トーナメント会場でも女性に向けた多くのイベントを開催してもらいました。内容も面白く、大変良い活動ができたと思います。サントリーレディスオープンでは、横峯さくらさんが女性イベントに参加され、宮里藍さんもわざわざ参加者にご挨拶に来てくださいました。男子の試合(日本ゴルフツアー選手権)でも、女性を入場無料にしていただくなどの協力があり、一回目としては全国的なとても良い取り組みになりました。

――9月には「ゴルフ健康週間」が行われました。

山中専務理事  日本シニアオープン選手権の週を、「ゴルフ健康週間」とし、様々なイベントを実施しました。ゴルフは、健康の維持や増進に極めて役に立ちます。このことを知っていただくため、トーナメント会場でのスタンプラリーや、健康にまつわるトークショー、JGA WAGスクールを開催しました。JGAの主催している大会でこういったイベントを開催する必要があると思いますので、今年以降も引き続き取り組んでいこうと話をしています。

池谷会長  もちろん、ゴルフ場で様々な振興イベントを行うことも重要ですが、今後は練習場などの協力も得て、さらに活動を広げていきたいと考えています。JGAに加盟していないパブリックゴルフコースにも呼びかけたい。日本ゴルフ協会は100年前、7つの倶楽部(神戸・根岸・東京・鳴尾・舞子・程ヶ谷・甲南)が集まってできた組織です。現在では、ナショナルフェデレーションという立場から、日本のゴルフ界をまとめる役割を担う組織となっています。ですから、求められている役割にさらに対応できるようにしたいと考えています。またオリンピックの正式競技に採用されたことで、JGAの果たす役割はますます大きくなってきていると思います。

山中専務理事  JGAが2012年に公益法人になったということもポイントです。一昨年、定款を変更したのは、ゴルフ界全体のための普及振興を図るためでした。ゴルフをプレーする人を増やす、ゴルフを少しでも長く続けていただく、ゴルフは健全なスポーツであるというイメージアップを図る。公益法人として、国から期待されている役割を果たすために定款を変え、ゴルフ振興に力を入れることを宣言しました。昨年は、前述の通り、いくつかの具体的な活動ができましたが、これを加速していかなければと考えています。

池谷会長  公益法人になり、そしてオリンピック競技にもなり、環境が変わってきています。それに対応して、我々の活動も変えていかなければなりません。これから先の100年、そうした活動をさらに推し進めていくことが目標です。

山中専務理事  「ゴルフと健康」は、ゴルフが生涯スポーツであり、少しでも長く高齢者に元気にいてもらいたいという国の期待に応えるテーマでもあります。膨れ上がる一方の医療費の問題もありますし。ゴルフは、きちんとしたデータで見ても明らかに健康に寄与しています。長く楽しめる生涯スポーツという特徴を持ち、高齢者の孤独・孤立を防ぐ効果もあります。

残念ながら、ゴルフには「金持ちのスポーツ」「おじさんのスポーツ」などと誤解されているイメージがあります。あらゆるスポーツの中で、ゴルフだけに課されている施設(ゴルフ場)利用税の問題や、関係者とのゴルフを禁じている国家公務員倫理規定の問題もあります。JGAとしては、まずはゴルフの普及、振興をきちんと行い、イメージアップを図っていこうという方針でいます。なかなかハードルは高いですが、一つひとつやっていこうと思います。

またゴルフ場は、地域や社会に大きく貢献しています。税収だけでなく、雇用の増大や経済効果、道路が整備され、貴重な自然を保全する場所にもなっています。広い土地があり駐車場、食堂や風呂の設備を備えていますから、災害時には様々な救援活動の拠点になることが可能です。ゴルフ場がいかに社会に貢献しているかを、もっとアピールしていくことも、JGAの大切な役割の一つだと思っています。

女性理事の拡大と活動資金源確保を

池谷会長  このような活動を強化していこうと思っていますが、一番重要なのが資金(財源)の確保です。求められることがこれだけ多岐にわたってくると、とても今までの収入では対応できません。いかにしてJGAの収入を増やし、さらに大きな活動ができるようにするか、腐心しているところです。

山中専務理事  池谷会長が就任し、公益法人としての透明性確保にも本格的に取り組んできました。その一つとしてガバナンスコードで求まれている女性の理事の割合を30%まで増やししましたが、さらに増やして40%にすることや、理事の多様性、コンプライアンス問題に対応することなどが求められています。

池谷会長  女性だけでなく、様々な分野の知識を持った方に参加してもらい、透明性の高い組織運営をしていくことが重要だと思います。

山中専務理事  コロナ過を経て女性のゴルファーも少しずつ増えてきています。正確な数を把握するのは難しいですが、現在は全体の18%などと言われています。ゴルフ場によっては来場者全体の20%を超えているところもあります。

その一方で、女性の理事を40%にしなければいけませんので、ゴルフ界以外から知見を持っている方に入ってもらうこととなると思います。

池谷会長  女性の理事数を、ゴルフ界の実情より先走って増やすことを考えていますが、女性の理事が増えていけば、それだけ女性の意見が反映されるようになります。女性ゴルファーを増やすために、大いに役に立つと思います。

本当はゴルフ界の中から女性理事が誕生すればいいのですが、まだ各ゴルフ場における女性理事も少ないですし、ゴルフ界の中だけでは探しきれないのが現状です。一方、他のスポーツ界の中には、ゴルフをされている方が多いですし、そういう方にも加わっていただきたいと考えています。

100周年記念事業の取り組み

――設立100周年という節目の年になりました。記念事業などを行うのですか。

池谷会長 日本ゴルフ協会が設立されたのが1924年10月17日です。ちょうど1世紀がたちました。今年は、JGAとともに歩んできたといっても過言ではない二つのゴルフ場、東京ゴルフ倶楽部で日本オープン選手権、廣野ゴルフ倶楽部で日本アマチュア選手権が開催されます。設立時からJGAを支えてきた歴史のある倶楽部で100年を祝おうと考えています。

山中専務理事  100周年記念事業として、ロゴマークを作ってグッズを出すことや、日本のゴルフの歴史をデジタル化して皆さんが見られるようなゴルフペディアを作ることを計画しています。さらに、今ある「日本プロゴルフ殿堂」とは、JGAも一緒になってアマプロを含めたゴルフ界すべての偉人を顕彰する日本ゴルフ殿堂に発展させることを協議するなど、様々な活動を考えています。

池谷会長  今年はパリでオリンピックが開催されます。JGA100周年の時に、日本の選手が金メダルを獲ることが出来たら最高のお祝いです。更には、JGAがアマチュア時代に育てた選手がオリンピックで活躍してくれたら、これほどうれしいことはありません。

100周年とは少し離れますが、地球温暖化に歯止めがかからず、この先も暑い夏が続くと思われます。真夏でも安全、快適にゴルフができるような対策、メッセージを発信していくこともJGAの務めだと考えています。

山中専務理事  JGAに眠っている資産は、知的財産を含めてまだまだたくさんあると思います。それをどうやってお金に替え、ゴルフの普及・振興のために活用するか。今まで手を付けてこなかった部分なので、専門チームを作り、権利の洗い出しと何ができるのかを検討しているところです。さらに、協賛していただいている企業や寄付をいただいている方に対しても、きちんと成果をあげ、ご期待にお応えしたいと考えています。

池谷会長  ゴルフの振興策を進めることで、大きな目標としてはゴルファー人口を将来1000万人にしたい。ただし、少子高齢化の中では、達成は難しいかもしれません。ゴルフ場の数が増える時代が終わり、むしろ減ってきています。JGAに加盟している1490ほどのゴルフ場だけでなく、他のゴルフ場、他のゴルフ関連団体とも手を取り合って、この先100年も、ゴルフが皆さんから愛されるスポーツとして発展していく土台を作る考えでいます。

 

取材/文・髙岡和弘(情報シェアリング部会委員)

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