ゴルフは市の産業として大きな位置を占めている:千葉県市原市・小出譲治市長インタビュー

ゴルフ場の数は日本一 人口27万人の市に年間176万人が来場

――千葉県の真ん中に位置する市原市は「ゴルフの街いちはら」というキャッチフレーズのもと、ゴルフの普及、振興に力を入れています。

小出譲治市長 市原市には32クラブ33カ所のゴルフ場があり、その数は日本一です。ゴルフ場は市内のいろいろなところに点在し、市域面積368平方㌖の約11%を占めています。また、ゴルフがコロナ禍のもとで、密を避けるスポーツと言われるようになった影響もあり、昨年は前年より10万人以上増えた176万人の方に来場していただきました。この数は大きいです。

――市原市の人口は約27万人ですからね。

小出市長 圏央道の市原鶴舞インターチェンジで早朝に下りる車のほとんどはゴルフ場の利用客で、市の産業としても大きな位置を占めます。以前はゴルフを終えてから市内で食事をしてくれたり、お土産を買ってくれたりという人もいました。ただ、最近は特に土、日曜日になると渋滞を避けるために早く帰ってしまう人が増えています。そのため飲食店など地域経済への波及効果をもう少し高めることができればと感じています。一方でここにきて東京湾アクアラインが渋滞緩和のために通行料金を変動させるという動きが出ていて、そうなれば少しは解消されるのではと思います。

――「電車でゴルフ」という流れも増えれば、駅前の飲食店で反省会をしてから電車で寝て帰るというパターンもできます。

小出市長 いくつかのゴルフ場では駅までの送迎バスも出ていますし、少しでも市内のお店でゆっくりして帰っていただければいいなと思います。

――市原市でゴルフを楽しんでもらうための試みについてお聞きしたいのですが、市のゴルフ振興は地方創生部の観光・国際交流課が担っているのですか。

小出市長 以前は生涯学習の部署が所管していたこともありましたが、現在は地方創生部観光・国際交流課の所管となっています。地方創生部というのは、スポーツや芸術、観光など、幅広くこれからの街づくりにおいて肝心な部分を担っている部署です。

地方創生部 観光・国際交流課と市原市ゴルフ場連絡協議会が協働してゴルフ振興を進める

ゴルフ場と市がウインウインの関係になることが最も重要

――その中でも「いちはらゴルフ場巡り33」というスタンプラリーなどは魅力的です。

小出市長 ゴルフの街をアピールするために議論を重ねる中で生まれた企画です。お遍路さんのゴルフ場版で、市内33カ所のゴルフ場を回ってスタンプを集めた方に賞品をプレゼントします。33カ所でのプレーを達成した方は既に500人を超え、2周目に入った人も多くいるほど盛況です。ゴルフ場と市がウインウインの関係になることが最も大事なので、ゴルフ場にはフロントでのスタンプ押印などはお願いしますが、費用は市がすべて出しています。そのような市の姿勢をゴルフ場に理解していただきながら、ゴルフ場にとっては誘客促進、市にとってはゴルフの街としての認知向上と地域経済への波及と、それぞれにメリットを生み出すことを意識して実施しています。

――ゴルフ未経験者を対象に、道具がなくても実際のコースでゴルフ体験ができる「手ぶらdeゴルフ」もあります。

小出市長 最初からクラブなどの道具一式をそろえたりするのはハードルが高いですが、手ぶらで体験できるなら気軽に始められると好評です。定員10人は、毎回すぐに埋まってしまうほどの人気ぶりです。

――ふるさと納税でも返礼品としてクーポンやゴルフ場のプレー券が用意されています。

小出市長 市原市にはライオンの工場があり、ふるさと納税の返礼品は年末の贈答品などで人気がある洗剤のセットが1位の人気です。ゴルフ場プレー券はそれに次ぐ2位で、市原市ならではの返礼品として大変人気があります。

市原をゴルフの聖地に

――ジュニアゴルファーの育成にも力を入れ、今年3月には小中学生対象のゴルフ大会「市原市ジュニアゴルフオープン」を初開催しました。

小出市長 この大会をきっかけに、市原市をジュニアに目指してもらえるような「ゴルフの聖地」にしたいという思いがあります。野球なら甲子園、サッカーなら国立競技場と言われるように、ゴルフをする子供たちが市原に行きたいと思うようになってもらいたいです。第1回大会では128人の募集があっという間に埋まり、ハイレベルな子供たちが全国から集ってくれました。将来、プロで活躍できるような選手が、この中から出てきて欲しいという思いです。また、今大会の会場は姉ヶ崎カントリー倶楽部に協力していただきました。メンバーシップ制で普段はプレーできないような名門コースでラウンドできるという経験は、参加選手にとっても有意義なものになったのではと思っています。

――今年1月に公益社団法人日本プロゴルフ協会、PGA千葉ゴルフ会と「ゴルフの街いちはら」の推進に向けた連携協定を結んだのも、ジュニアを含めた底辺を拡大したい意向があるのでしょうか。

小出市長 「ゴルフの街いちはら」の取組の推進を図るために相互に協力することで、ゴルフを通じた交流人口や定住人口の獲得などの地方創生を進めていきたいと協定を結びました。ジュニアゴルファーの拡大もその一つで、今後はスナッグゴルフを使った小学生のゴルフ体験授業や、ジュニアゴルファーの練習環境の充実にも動いていきたいと思っています。雪国の子供たちにスキーやスケートの授業があるように、ゴルフ場の数が日本一の市原に暮らす市民にメリットをもたらしたいと思っており、子供たちがゴルフを体験できる環境作りは、その一つだと考えます。

県立市原高校と地域共創に関する協定 ゴルフ場での職場体験を通じて就職も

――指導者の問題も、PGA千葉ゴルフ会などからコーチを派遣してもらうことができれば解消するかもしれませんね。市域の高校とゴルフ場の連携も積極的に行っているということですが、詳細を教えていただければと思います。

小出市長 市原市と県立市原高校は2019年に、市原市南部の地域社会の活性化と地域人材の育成に寄与することを目的として、地域共創に関する協定を締結しています。行政と県立高校が包括連携協定を結ぶのは珍しいことです。地域から学生がいなくなると活気がなくなるので、町づくりの一環としてこのような形でゴルフ場とも連携することで生徒を増やし、高校を存続させていきたいという思いがあります。市原高校は、もともとあった商業高校と園芸高校と普通高校の3つが合併して1つになったものです。そこの園芸科には芝生を管理する緑地管理コースがあり、高校1年生の時からゴルフ場での職場体験を行い、市内のゴルフ場にグリーンキーパーとして就職する生徒もいます。

――グリーンキーパー不足に悩むゴルフ場としてはウェルカムですね。

小出市長 また、普通科の生徒も1年生の時に全員がゴルフ場体験をしていることもあり、フロント勤務としての就職なども人気があります。ゴルフ場は自然が豊富でクラブハウスもきれいなので、就職先として人気があるのかもしれません。

――少子高齢化が進み、特に地方からの若者離れが深刻化する中で、このような試みはお手本になるかもしれません。女性とゴルフに関してもお聞きしたいのですが、JGAは女性に今以上に充実した人生を送ってもらいたいという観点から、女性にゴルフを一層普及させ、楽しんでいただく活動を推し進めています。「ゴルフの街いちはら」として、そのような試みに関してはどのようにお考えでしょうか。

小出市長 ゴルフ場来場者が増す中で、最近は若い女性ゴルファーが特に増えています。今はウェアも種類が豊富で、レディースの大会で若い選手たちが活躍している影響もあると思います。

――市原ブランドのウェアなどもあれば、女性の来場者はもっと増えるかもしれません。

小出市長 今はタレントの山内鈴蘭さんに「いちはらプロモーション大使」になっていただいています。彼女はご自身のブランドのゴルフウェアなどにも取り組んでいますので、ファッションを楽しむという視点も含めて、女性ゴルファーへの情報発信にもご協力いただければと思っています。

――市原市出身でSKE48、AKB48の元メンバーでもある山内鈴蘭さんは、子供の時にプロゴルファーを目指していたので適任ですね。先ほど話に出た市原市ジュニアオープンでは、表彰式の司会を務めていました。「ゴルフの街いちはら」のアピールに向けて様々なことに取り組む小出市長も、最近はゴルフを再開されたと聞きます。

小出市長 夢中にゴルフをやっていた時期はあったのですが、ある時期にピタッとやめてクラブも握っていませんでした。しかし「ゴルフの街いちはら」とアピールをこれほどしている中で、自分もゴルフをやるべきだと思い、昨年9月くらいから、実に11年ぶりに再開しました。でもそれなりに年を取って飛距離も出なくなっているし、飛ばそうと思うと力が入ってなおさらダメ。ただ、久々にプレーしてみても、やはりゴルフの楽しさは変わらないですね。今まさに夢中になってうまくなりたいと頑張っているところです。

――市長が率先して市内でゴルフを楽しんでいただければ、これに勝る説得力はないかもしれませんね。最後に、これから力を入れて取り組んでいきたいことを伺いたいと思います。

小出市長 ゴルフ場と地域の連携を一層強めていきたいです。たとえば、クラブハウスのレストランも一般の人が利用できるようにすることで、飲食店が少ない地域の人たちに喜んでもらえるようになります。これは、ゴルフ場としても新たな収入源となるので、地域とウインウインの関係といえます。また、市原市で2014年から3年に1度、開催している芸術祭では、ゴルフ場で星空の鑑賞会も行いました。このようにゴルフ場と地域が連携していくことで地域全体を活性化させ、「ゴルフの街いちはら」の取組みをさらに発展させながら、ジュニアに目指してもらえる「ゴルフの聖地」にしていきたい、そのように考えています。

 

構成・鈴木遍理(情報シェアリング部会委員)

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