「初心者ゴルフスクール」が大人気!
東北ゴルフ連盟(TGA)インタビュー
鎌田 宏 理事長
金原 寿一 事務局長
――東北ゴルフ連盟の現状について、教えてください。
鎌田理事長 昨年末時点の加盟倶楽部数は、101です。ここ10数年間の加盟倶楽部数および入場者数の推移については、やはり2011年3月に起きた東日本大震災の影響が大きかったと思います。
加盟倶楽部数は、東日本大震災前年と比較すると30倶楽部減少しています。入場者数についても、東日本大震災前と後のそれぞれ10年間を比較すると、5%~10%、6県平均で7%減っています。これは加盟倶楽部数自体が減ったこともありますが、中心となっていた60歳代から70歳代のゴルファーが高齢化した影響も大きいと推測しています。
しかしながら、コロナ禍が長引く中、全国と同じように東北管内でも、密にならない屋外スポーツとしてゴルフが見直され、特に若い年齢層および女性の来場者が増えています。新型コロナが発生した直後の2020年に年間308万人まで減った入場者数が、今では320万人を超える数まで増えています。シーズンにはゴルフ場の予約が取りづらい状況が続いており、休日の練習場は混雑で常に順番待ちの状態と聞いています。
金原事務局長 コロナ禍をはさんだ2016年から21年までの6年間、宮城県内のゴルフ場入場者数に占める女性来場者の推移を調べた数字があります。16年の女性入場者は全体の8.4%でしたが、21年には9.6%まで増えています。10%を超えている月も、複数回ありました。
――連盟のゴルフ振興策について、ご説明ください。
鎌田理事長 少子高齢化による人口減少が、今後、日本社会全体のあらゆる分野に影響を及ぼすことが考えられます。しかも、22年の国勢調査によると、東北6県の人口は2年間で2~3%減っており、減少率が高い都道府県のトップ5を占めています。さらに加盟倶楽部の6割にあたる60倶楽部が、雪による冬季休業をせざるをえないというハンディも抱えています。
そこで、ゴルフ人口の底上げを図ろうと、昨年8月から、ゴルフ未経験者を対象とした無料の「TGA初心者ゴルフスクール」を開講しました。8月から12月までの5か月間で415人の受講者が参加し、上々のスタートを切ったと思っています。今年からは通年事業とし、継続的な施策として工夫を加えながら受講者数を増やしていきたいと考えています。
金原事務局長 「初心者ゴルフスクール」は、18歳以上のラウンド経験のない人を対象に募集しました。連盟に協力してくれる練習施設で、1回のレッスンは60分間で、計4回の無料レッスンを受けることができます。協力練習施設は、6県で23か所あり、連盟は1人当たり6000円の助成費用を支払っています。
受講者は、男女がほぼ半々で、予想より女性が多いと感じました。年代別に見ると、40歳代が一番多く、28%。次が50歳代の24%で、中年世代が半分強を占めました。三番目が20歳代の19%でした。
告知方法ですが、各県の地元の新聞に協力していただき、記事を掲載してもらいました。ポスター、チラシも関係各所に掲示してもらいました。受講者に、スクールを知ったきっかけを聞いたところ、新聞が29%、家族や知人の口コミが27%、ポスターおよびチラシが24%でした。スタートから2か月の時点で同様の調査を行った時は、新聞が42%ありました。時間がたつにつれて、「新聞」と答えた人が減り、「家族や知人の口コミ」「ポスターおよびチラシ」が大きく伸びていきました。
――初年度に400人を超す受講者があったのは素晴らしいと思います。次年度以降に向けての課題や今後の方針があれば教えてください。
金原事務局長 スタートにあたり、各県連の努力によって各県の地方紙に大きく取り上げられたことから、申込者数は順調に伸びました。新聞掲載直後、連盟にはひっきりなしに問い合わせの電話が入りました。ただ、徐々にその効果も薄れていきました。どのような方法でPRを図り、息の長い事業として実績をコンスタントにあげていくかが問われると思っています。賛同していただける練習施設を増やすことも重要でしょう。施設が近くにないと通いにくいですから、地理的利便性も考慮しながら、施設の数を増やしていきたいと考えています。
最終的には、受講者の方々にコースデビューをしてもらうことが大きな目的です。今後はコースデビュー支援も検討していかなければなりません。
「ゴルファーケション」など、各倶楽部が創意工夫
――管内のゴルフ場などで、独自の振興策を行っているところはありますか。
金原事務局長 福島県で、「ゴルファーケーション」という事業を行っています。福島県の県南地方振興局と4つのゴルフ場がタイアップし、ゴルフ場の宿泊施設に泊まり、部屋などでテレワークを行い、就業時間の前後や休憩時を利用してゴルフを楽しむというワーケーションです。それぞれのゴルフ場が独自のプランを提供すると共に、振興局がPR費用を含めた広報を担当します。東京駅から新白河駅まで、新幹線で70分という良好なアクセスを活かした企画です。
例えば、次のようなスケジュールが考えられています。午前8時から部屋で仕事をして、午前11時から正午までショートゲームの練習。ランチを取りながら午後2時まで仕事をし、その後、ハーフラウンドを楽しむ。ちょっとリッチなディナーの後にまた仕事をする。そしてゆっくり温泉に浸かって就寝――といった具合です。
ほかに「ウィズデー(女性同伴)」「レディースデー」「シニアデー」等を設けて昼食代込みの割引料金を設定するなど、各倶楽部が工夫をこらして入場者数の拡大に努めています。今後、こうした情報を共有し、それぞれの倶楽部が活用できる仕組みができるといいと考えています。
温泉、キャンプ場などと組んだ複合型レジャーとしてのゴルフ振興も
――将来の展望について、お考えはありますか。
金原事務局長 東北地方は、人口減少の割合が他の地域と比べて大きく、東日本大震災で加盟倶楽部数が減少したり、6割の加盟倶楽部が冬季は休業したりと、ハンディがあります。しかし、東北高校出身の宮里藍さん、東北福祉大出身の松山英樹プロ、アマチュアとして95年ぶりに日本オープンを制した蝉川泰果選手など、数多くの名選手を輩出している土地柄でもあります。自分もあのようになりたいという憧れや大きな夢が、ゴルフを始めるきっかけや、うまくなりたいという若者の原動力になってくれればと願っています。
鎌田理事長 先ほど申し上げました通り、ゴルフ環境という面からみると東北管内は必ずしも良好とは言えません。しかし、若い世代の人達が増えてくると、また異なった楽しみ方が生まれるのではないかと期待しています。
つまり我々の年代がゴルフを始めたきっかけは、ゴルフというスポーツに魅了されたのはもちろんですが、会社勤めの中で、取引先を含めて親密な人間関係を築く手段のひとつでもありました。しかしながら、今の若い人たちは将来、夫婦や友人、家族とプレーしたいと思っている人も多いのではないかと思います。ゴルフ人口の裾野を広げていくためには、そういった一般ゴルファーが気軽にプレーできる環境を作っていくことも大事ではないでしょうか。幸い、東北にはスキー場、キャンプ場、さらには温泉等の豊かな自然環境が数多く存在します。複合的なレジャーのひとつとしてゴルフが盛んになることを願っていますし、我々が少しでもその手助けができるように努力したいと思っています。
構成・髙岡和弘(情報シェアリング部会委員)