「スナッグゴルフ×椎茸」で地域貢献:ミッションバレーゴルフクラブ(福岡県鞍手郡小竹町)

 

「スナッグゴルフ×椎茸」。何これ、と思わせるような取り合わせを実践して地域の子どもたちに喜ばれているゴルフ場が福岡県にある。同県鞍手郡小竹町のミッションバレーゴルフクラブだ。3年前から体験学習として同町の3小学校の生徒たちに1年に1度、同クラブが所有する原木を使用して椎茸の種植え付けと、スナッグゴルフを並行して行っている。今年は4月23日が体験学習の日だったが、あいにくの天気のためゴルフ場近くの小竹町町民体育館で開かれた。

《小竹町教育委員会からのかねての依頼を実現》
ゴルフ場の入り口から直線距離にして約200m。子どもたちの体験の場となった小竹町町民体育館から賑やかな声が聞こえる。ほとんどの生徒が初めてのスナッグゴルフ。こんな名称を聞くのも、まして通常のゴルフクラブにあたるプラスチック製のランチャーなどを手にしたこともない。
「うまく当たらんなあ」
「難しいなあ」
と言いながらも楽しそうにランチャーを振り、自分の意思に反して転がるボールを追いかける。体育館の床は「ガラスのグリーン」以上に滑りがいいだけに、初体験の子どもたちには手ごわすぎる。
スナッグゴルフの先生たちはミッションバレーGCの従業員。3班に分かれた生徒たちに打ち方や、どんな競技かを教えて、その後30分間、一緒に体育館内を走り回る。通常のゴルフ場では大人が相手だが、子どもが対象となると、童心に帰るのか、従業員たちもどこか楽しげである。器具は福岡県ゴルフ協会所有の2セットを借りている。
壁を一枚隔てた体育館のロビー。ここではスナッグゴルフと二手に分かれたもう一つの「椎茸班」が、福岡県飯塚農林事務所林業振興課の職員たちから椎茸の種の植え付けの手ほどきを受けている。職員に手伝ってもらい、電気ドリルで1・5mの原木の数カ所に穴を開け、その後、種を植え込んだ穴をトンカチでトントントン。こちらも全員で30分間。終われば、スナッグゴルフ班と交代して体育館内へ直行である。
全行程1時間で「スナッグゴルフ×椎茸」を修了する。生徒たちは小竹町の小竹南・小竹北・小竹西の3小学校の3年生たち。体験学習は毎年3年生と決まっており、今回は南25人、北と西がそれぞれ9人ずつの計43人。南は午前9時から、北と西が同10時30分から2部制で行われた。
今年はあいにくの気象条件のため体育館になったが、天気が良ければミッションバレーGC内の現在は使用していないティーグラウンドなどを使用する予定だった。ちなみに、昨年も天気に恵まれず体育館を使った。
この取り組みは今年で3年目。「ずっと小竹町教育委員会から『ゴルフ場の方で小学生に何か体験させてもらえないか』と相談を受けていましてね。それでこんなの(スナッグゴルフと椎茸栽培)をやってますよ、と話したんです」と田村三成専務が始まりを説明してくれた。

《猪被害から椎茸栽培がスタート》
では、なぜ椎茸栽培か。多くのゴルフ場同様にミッションバレーGCも猪被害に悩まされていた。敷地内のブナの実を求めて猪がコースを荒らすため、伐採を決めた。多くの木を切ったのはいいが、さてそれをどうするか。従業員全員で知恵を出し合った結果、椎茸栽培に行き着いたという。
原木は1・5mのものが500本採れた。さらに、椎茸栽培では全国的に有名な大分県の業者にアドバイスを受け、そこから原木を購入して今では5000本にまで増えた。1本の原木から20個の椎茸採取が可能で、10万個が見込まれる。栽培2年目の昨年、福岡県椎茸品評会の生椎茸部門で最高賞の「県知事賞」を受賞。今では小竹町のふるさと納税の返礼品としても人気がある。また、ゴルフ場のレストランでは椎茸を使った「天空丼」(1680円)や、そうめんに椎茸の粉末を練り込んだ「椎茸そうめん」(1300円、夏限定)を提供。さらに6個入りの「天空茸」(1000円)も販売する。
椎茸の原木は10番ホールのOBゾーン右サイドの3000平方mの敷地に展開。この場所は椎茸栽培に最適とされる落葉樹林のある中で適度な湿度があり、木漏れ日も届く。たまたま原木を設置した場所は椎茸が大喜びする環境だったのである。

《「町にお世話になっているし、できるところは協力したい」》
小竹町は福岡県のほぼ中央部にあり、福岡市から北東40kmに位置する。元々、炭鉱で栄えたが、現在では過疎化が進む。人口は約6700人。「小竹は名物や名産品も特にありません。これまでゴルフ場は町にお世話になっていますし、できるところは協力していきたい」とは田村専務だが、地域活性化のための協力姿勢を示す。教育委員会からはスナッグゴルフのほかにも、遠足の候補地としてゴルフ場の一部開放を打診されているという。

《将来のゴルフとの出合いのための最初の「出合い」》
子どもたちにとってゴルフ場での遠足が現実のものとなれば、また楽しみが増える。あたり一面、緑に覆われた場所は遊園地以上の思い出を作ってくれるだろう。この日、体験学習をした43人の生徒たちは、将来のゴルフとの出合いのための最初の「出合い」を経験した。それぞれが感想を述べた中で一番多かった言葉は「楽しかったです」。スナッグゴルフのキーワードの一つに「楽しく」が含まれるが、子どもたちの笑顔が証明していた。体育館を離れる直前には、1人の生徒が「来年もまた来たいです」と大きな声を張り上げた。3年生だけのイベントだけに参加はできないが、「再戦」を熱望したのである。
なお、種を植え付けた椎茸の原木は学校へ持ち帰り、日陰など椎茸の成長に適した場所に設置して、子どもたちが来年4年生の秋を迎える頃にニョキニョキと笠をかぶった姿を現すという。

取材/文・森本博樹(情報シェアリング部会・委員)

 

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