業界は回復基調でもゴルフ場が閉場に追い込まれている危機感は変わらない 新規ゴルファーの創出に全力:中国ゴルフ連盟インタビュー

一般財団法人中国ゴルフ連盟

田村興造会長(中央)
山本航三専務理事(左)
作本浩徳事務局長(右)

ゴルファーの高齢化 3万人余のアンケート調査で浮き彫りに

――中国ゴルフ連盟は広島、岡山、山口、島根、鳥取各県の加盟組織団体と連携しながら、ゴルフの普及、振興に取り組んでいます。現在はどのような状況なのでしょうか。

田村会長 連盟傘下のゴルフ場は、いずれも非常に厳しい環境にあります。加盟倶楽部数は2023年1月現在で107倶楽部ですが、ピークの15年より30倶楽部も減少しています。しかも新型コロナウイルスの感染が広がり始めた20年4月からの3カ月間は緊急事態宣言の発令などで来場者が激減し、連盟としては何とか支援したいと、不織布マスクの配布や見舞金10万円を各倶楽部に送金するなどして、しのぎました。

その後は屋外で3密を回避するスポーツという認識が広まり、お客さんもゴルフ場に戻ってきてゴルフ業界は回復基調となっています。また、若い人たちがゴルフを始める動きも出ていて、女性やいったんおやめになっていたシニア世代のリターンゴルファーが来場するようにもなっています。この傾向は平日、土、日を問わず、にぎわいを見せています。

ただ、ゴルフ場がこれほど閉場に追い込まれているという危機感は変わりません。ゴルフだけではありませんが、2025年問題という、いわゆる団塊の世代がリタイアする年齢となり、分厚いプレーヤー層が一気に減っていく状況が続いています。それに対して連盟は何ができるか模索してきて、現行プレーヤーのプレー頻度を増加させることも大事ですが、それ以上に新規ゴルファーを増やすことが必要で、そのための取り組みを始めています。

作本事務局長 中国連盟が新規ゴルファー創出のための検討会を最初に開いたのは、17年3月でした。中国連盟の総務委員会、各県ゴルフ協会の事務局長、各県支配人会の会長に集まっていただきました。その中で参考にさせていただいたのは、01年からゴルファー減少問題に取り組んでいる関西ゴルフ連盟さんの事業です。それらを実現するために、まずアンケート調査を実施し、加盟倶楽部の協力で17年4月の1週間で来場者3万446人から回答をいただきました。内訳は男性2万7870人、女性2576人です。すると50代以上は男性が72%、女性は67%と、ゴルファーの高齢化が浮き彫りになり、友人とプレーしているのは54%、職場・仕事関係は31%という結果も出ました。これらの数字で現状認識を共有し、新しい若いゴルファーを創出していく取り組みに業界全体で取り組んでいくことにしたのです。

そして翌18年4月からは新規ゴルファー開拓事業を、ゴルフを始めようプロジェクトとしてスタートさせました。

田村会長

 

ゴルフ場と練習場が一体化したプロジェクトを推進

――その一環として続けている初心者向けゴルフレッスンでは、広島県だけでも20の練習場、10のゴルフ場で実施していますね。練習場とも一体化したプロジェクトは、いろいろ大変だったのではないかと思います。

作本事務局長 もともと中国連盟と練習場はあまり繋がりがありませんでしたからね。各県の練習場経営者や責任者の方に集まっていただき、事業の内容を説明するところからスタートしました。ただ、練習場も危機感を持たれているところもあれば、そんなことをしなくても順調にいっていると言うところもあり、様々です。そのうえ練習場を統括する組織も広島県にはあったが、その他の県にはありませんでした。そのような中で何をやろうとしているかを理解してもらい、初心者向けレッスン会を周知させるために新聞に折り込みチラシなども入れました。今はインスタグラムなどSNSを使った広告も活用し、この取り組みを継続させるように努めています。

――レッスン会に参加した人たちが実際にゴルフ場で頻繁にプレーしてくれるようにする取り組みも大切なのでは。

作本事務局長 はい、レッスン会を行っても、それをゴルフ場でのプレーにつなげていかなければなりません。各県のゴルフ協会と一緒に、レッスン会を体験ラウンドにつなげていこうという試みを始め、広島県では19年11月に実際に体験ラウンドも行いました。これを各県に広げていこうという矢先にコロナ禍になってしまったのです。ただ、現在も体験ラウンドを進めていこうという試みは続けています。

――若いゴルファーを創出する試みを続けていく上で、ゴルフ場におけるマナーを覚えてもらうことも大切です。

田村会長 ゴルフを始める若い人たちが増えるのはいいことなのですが、半面でマナーやエチケットの乱れという問題も目立ってきて、中国地方のゴルフ場も対応に苦慮しています。今は、キャディー就労者の減少やコストカットなどでキャディーさんが少なくなってセルフプレーが多くなり、かつてのように会社の上司らに連れられてマナーなどを教えられながらプレーする機会も少なくなっているためでしょう。ただ、ゴルフは紳士のスポーツと言われるくらい、マナーやエチケットは大事です。中国連盟としても22年はエチケットやマナーに関する小冊子4000部を初心者のレッスンを行っている施設に配布し、23年も各地区の連盟と協調してエチケットブックを購入し、加盟倶楽部や練習場に配布する予定です。

――中国ゴルフ連盟のホームページにはルールやマナーを覚えるための「マンガで覚えよう これだけは知ってコースへ」がアップされています。とても分かりやすく説明していると思いました。

作本事務局長 それもプロジェクトの一環です。もともと北海道連盟さんが作っていたものです。そのような連盟の横のつながりも活用していければと思います。

――ゴルフの普及、振興には新たな女性ゴルファーの創出も欠かせません。

田村会長 レッスン会などの参加者をモニタリングしていると女性の参加者が大半を占めていて、女性の間でゴルフへの関心が高まっていることは実感しています。このような事業を通じて女性の参加者を増やすことは振興の一助になると思っています。また、私の友人関係ですと、ご夫婦でゴルフをされる方も増えています。そのような夫婦ペアのプレーヤーも増やすために、ゴルフ場と協力して様々なサービスのアイデアを出していこうと思います。

中国連盟としては、女性の役員を増やすことも大きな課題です。これは一朝一夕にはいかず、ある程度のスパンをもって取り組んでいかなければいけません。

山本専務理事

ゴルフ場への理解を広める 過疎の山間地に雇用、財源、社会保障費削減をもたらす

――ゴルフの振興、普及のためにはゴルフ場と地域との密着も大切で、災害対策拠点としてのゴルフ場の役割も注目されています。中国地方の現状はいかがでしょうか。

田村会長 ゴルフ場が災害対策拠点となることは分かりますが、中国エリアは豪雨災害が多く、ゴルフ場そのものが大きなダメージを被ってコースの一部が流されたりしています。そのため県などにお願いし、復旧に関する補助金の支払い範囲を広げてもらっているのが実情です。これまで災害復旧補助金はクラブハウスや機械設備などにしか適用されないことになっていました。ゴルフ場にとって本当に困るのはコースそのものがダメージを負っているケースで、それを考慮していただくことがゴルフ事業者の救済にもなります。そのため中国連盟としてもバックアップをする必要があり、行政も含めた関係先を回って、広島県のご尽力もあって救済されるところが増えました。

というのも、連盟傘下のゴルフ場は基本的に山間地に位置していて、大部分が過疎の土地にあります。そのような地域にあっては雇用を確保することも大事で、ゴルフ場は税金も含めてお金を落としていただく大切な存在なのです。

また、ゴルフは生涯スポーツとして80代でも元気にプレーされている方がたくさんいます。精神的にも身体的にも元気に過ごしていただければ、社会保障費の削減などにもつながります。そのようなことを関係者に常日頃、訴え、アピールしています。

山本専務理事 JGAには、そのような現状もホームページだけではなく、いろいろなメディアを活用してPRしていってもらいたいと思います。今はゴルフ業界も潤っている状況だと思いますが、一般の方にゴルフへの理解を深めてもらうことは大切で、それが国家公務員の倫理規定の改定や、将来のゴルフ場利用税廃止への理解にもつながります。ゴルフ業界全体を巻き込み、いろいろな支援もいただきながら、幅広いメディアを活用していただければと思います。

田村会長 JGAは日本のゴルフを統括する組織です。今後のゴルフ界に危機感を持ち、振興や普及に取り組むのはいいことですが、遅きに失している感もあります。今後は一層のリーダーシップを発揮し、ゴルフの普及、振興に向けた目的、目標を達成していくために強力な取り組みを推進していただきたいと思っています。

 

構成・鈴木遍理(情報シェアリング部会委員)

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