栃木県鹿沼市と鹿沼グループが中心となって地域振興を実施:鹿沼グループ福島社長、佐藤鹿沼市長インタビュー

栃木県の中央部にある人口約9万7000人の鹿沼市。ここでは、人気漫画の「風の大地」の舞台となった鹿沼カントリー倶楽部と鹿沼72カントリークラブを経営する鹿沼グループが中心となって、ゴルフ場と自治体が連携して花火大会や婚活イベント、ふるさと納税推進事業などさまざまな取り組みを展開しています。鹿沼グループの福島範治社長と鹿沼市の佐藤信市長に、ゴルフ場と自治体による地域振興事業などについてお伺いしました。

▽鹿沼グループ 福島範治社長

――鹿沼グループでは地元自治体である鹿沼市と連携してさまざまな地域振興事業、イベントを展開されています。

福島社長 私どもでは、経営の理念として3つのことを掲げています。「自然とともに」、「人を大切に」、そして「地域との共存」です。ゴルフ場は移転することはできません。ですから地域にしっかりと根をおろして、長い目で見て、地域の皆さまとの絆を大切にして進んでいきたいと考えています。会社の本拠地もここ鹿沼市に移し、社員も地元から募っています。

コロナ禍で始めた花火大会

――ゴルフ場での花火大会の開催はどのような背景ですか。

福島社長 ゴルフ場での花火大会のきっかけは2020年のコロナ禍でした。当時、医療従事者の方々が大変な状況にあり、各地で医療従事者に感謝するイベントが行われるようになりました。「ゴルフ場でも何かできないか」とアイデアを募った中の一つが花火大会でした。実は、コロナ禍で花火師のみなさんも大変厳しい状況の中にありました。そこで、さまざまな関係者の話を聞いて、ゴルフ場でも花火を上げられる、ということになり、医療従事者へのエールを込めて、チャリティー花火大会の実施に踏み切りました。

一方、鹿沼市では、伝統行事のさつき祭りに合わせて開催していた花火大会がコロナ禍で中止になり、2021年も難しい、という状況でしたので、佐藤信・鹿沼市長に「さつき祭りの花火大会をうちのゴルフ場でやりませんか」と提案したところ、「それはありがたい」という話になって、2021年から鹿沼市との協力関係で続けています。

――今年の評判はどうでしたか。

福島社長 鹿沼市の後援、そしてさつき祭りの協賛事業として、5月27日に鹿沼72カントリークラブで1000発の花火を打ち上げました。地域の皆さまへの感謝を込めたイベントでした。駐車場に300人、2階テラス席に200人の計500人の来場者がありました。尺玉など広い場所でないと打ち上げられない花火が上がり、おかげさまで好評をいただきました。「コロナ禍で各地の花火大会は中止が多いのに開催してくれてうれしかった」という声も聞かれました。

――ふるさと納税の事業でも鹿沼市と協力していらっしゃいます。

福島社長 これは市のほうからご提案がありました。2022年の11月に、鹿沼地区ゴルフ場協議会と鹿沼市で、「ふるさと納税事業協力協定」を結び、ふるさと納税自動販売機の第1号を鹿沼カントリー倶楽部に設置して12月から運用を開始しました。クレジットカード決済で納税すると、出てくるレシートと引き換えにゴルフ場利用券が返礼品として受け取れる仕組みです。納税額は1万円からで、30パーセントが返礼品の利用券となり、その場から利用できます。12月1か月で約800万円の納税があり、その後もコンスタントに実績を上げています。

――変わったところでは、婚活イベントもゴルフ場の施設で行われています。

福島社長 若手の社員から、こんなことできないかとアイデアが出ていたことなのですが、鹿沼市の方からも、出会いの場を求めている人にその機会を提供する「鹿沼市出会いの場創造協働事業」として、提案がありました。2022年9月に、鹿沼市のシカにちなんで「しかコン」を鹿沼72カントリークラブの2階にあるバーチャルゴルフラウンジで第1回を開催しました。自己紹介やフリートーク、そしてバーチャルゴルフを使ったゲームで盛り上がり、男性14人、女性13人の参加でしたが、4組のカップルが誕生しました。第2回は今年の3月にやはり鹿沼72で開催して、今度は6組のカップルが誕生。続いて4月には会場を鹿沼カントリー倶楽部に移して開催して、バーチャルゲームで楽しんだ後はフリータイムとしてピッツアやイタリアンの料理を楽しみながら会話が弾んだようです。

やはりゴルフ場にくると、環境も変わり、気分も盛り上がる。そんな中で3回目も4組のカップル誕生に結びつきました。ゴルフ場が会場なので運営もうちの若いスタッフで進めています。参加者の中には「ゴルフを始めてみようかな」という人も出てきて、ゴルフ場にとっては、相乗効果にもなっていると思います。

子供たちの地域の交流の場として こどもピッツァ作り体験

――続いては、今年2月に鹿沼72で開催した「こどもピッツァ作り体験」について。

福島社長 これは、鹿沼市の教育委員会の後援をいただいて始めました。子供たちに地域の交流の場としてゴルフ場を利用してもらうイベントです。食育事業の一環とも考えています。20人の募集だったのですが、市から小中学校に告知していただいて、すぐに予約が満員になりました。当日は子供たちがシェフと一緒に一生懸命生地をのばして、思い思いのトッピングをして、専用窯で焼き上げる。

お母さんやおばあちゃん、おじいちゃんと家族でくる方も多くて、写真撮影をしたりして楽しい時間を過ごしてくれました。7月には第2回として「世界にひとつだけのピッツァを作ろう」をテーマに開催しました。

―多くの事業について伺いましたが、自治体と一緒に事業、イベンントを展開していくうえで大切なことは。

福島社長 まず、目的を共有することが大事です。どちらか一方にだけかたよった形ではうまくいかないと思います。ウインウインの結果がえられるように努力していくことだと思うのです。それには、しっかりとしたコミュニケーションを築く、ことが肝心です。

―福島社長は関東ゴルフ連盟の理事として、ゴルフ振興委員で「ゴルフと健康」部会長も務めておられます。その活動でも地域との連携がカギになります。

福島社長 これは広く栃木県に協力をお願いしています。自治体の後援が開催の条件となっている「JGA WAGスクール1Dayプログラム」の事業は、45歳以上の人を対象に、ゴルフ体験をしていただいて健康維持やコミュニティ作りに役立ててもらうことが目的です。9月11日から17日のゴルフ健康週間に、すでに県内の8つのゴルフ場が開催を決めていて、受講生を募集しています。1人でも多くの方に参加しえもらいたいと考えています。地道に継続していくことが大切で、地域におけるゴルフ場の存在意義にもつながっていきます。

市とゴルフ場がより連携をとっていくことで地域の活性化につながる

▽佐藤信鹿沼市長

――鹿沼市ではゴルフ場と連携してさまざまなイベントを開催して地域振興につなげています。

佐藤市長 いろいろアイデアや企画をいただいて取り組んできています。これからはより密接にかかわることが必要になってきていると感じています。

――ゴルフ場での花火大会について教えてください。

佐藤市長 さつきの町として知られている鹿沼市では、5月にさつき祭りが行われ、その祭りを盛り上げる幕開けイベントとして、黒川の河川敷で花火大会が開催されてきました。しかし、コロナ禍の中で、たくさんの人が集まるイベントを行政が開催することは極めて難しい状況になり、2020年は中止ということになりました。そんなとき、鹿沼グループさんから鹿沼72カントリークラブで花火を上げる企画を出していただいて、2021年から始まり、今年で3回目となりました。市民の間だけでなく栃木県内でも「鹿沼の花火大会」としてすっかり定着してきました。狭い河川敷では、なかなか上げることができない尺玉も広いゴルフ場なら上げることができる。迫力のある花火が上がり、圧巻ですね。

――ふるさと納税自販機の設置については。

佐藤市長 ふるさと納税の推進については、市もいろいろ努力をしていますが、その一翼を担っていただいています。スタートの12月だけでなく、その後もコンスタントに納税していただいています。これは大成功です。できれば他のゴルフ場にも広げていきたいと考えています。

市内のゴルフ場にこられる方は年間で約70万人。コロナ前にほぼ戻っています。人口9万7000人のところにこれだけの交流人口があることはとてもありがたいことですし、これからも、もっと知恵を絞って連携を深めていきたいと思っています。

――婚活イベントについてはいかがですか。

佐藤市長 鹿沼グループさんは、ゴルフだけでなく地域の人が交流できる場としてゴルフ場を活用されている。バーチャルゴルフがあって、飲食もあって、そんな施設を積極的に活用させていただきたいという思いです。

――鹿沼市にとって、ゴルフ場はどんな存在でしょうか。

佐藤市長 もっと連携をとっていくことで、地域の活性化につながり、交流人口も拡大していく。ゴルフ場さんとも目指す方向は一緒であり、ウインウインの結果につながっていくと思います。

2012年から市が主催して「鹿沼市ジュニアゴルフ大会」を開いています。県内はもとより、関東各地からの参加者もいて、毎年ジュニアの皆さんの熱い闘いが展開されており、今年も8月に第12回大会を鹿沼カントリー倶楽部で開きます。

また、気候変動による防災の観点からも、立地条件に合わせて、避難場所としてもゴルフ場にご協力をいただきたいと考えています。中山間地域では設置された避難所にいくにも、道路が寸断されたりする場合もあり、そんなときに比較的高台にあるゴルフ場を使わせていただくことで、市民の安全を確保することが可能となります。今後、個々の状況に応じて協定の輪を拡げていきたいと考えています。

 

構成・古谷隆昭(情報シェアリング部会委員)

 

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