ゴルフ振興委員会とエリア担当常務理事制度を立ち上げ:関東ゴルフ連盟インタビュー

一般社団法人関東ゴルフ連盟

佐藤 敏明 理事長
吉田 裕明 ゴルフ振興委員会委員長

 ――関東ゴルフ連盟は、8地区連盟中、加盟俱楽部数が一番多く、日本ゴルフ協会加盟倶楽部のうち約3分の1が所属しています。

佐藤理事長  関東ゴルフ連盟(KGA)は1都10県を統括していて、501倶楽部が加盟しています(2023年1月時点)。ただ、関東の全ゴルフ場から見ると、組織率は70パーセント弱に過ぎません。できるだけ多くのゴルフ場に加盟していただき、KGAと考えを共にして歩んでいただきたいと願っています。

ゴルファーの数も、日本全体の約30パーセントを占めていると思います。なおかつ、首都圏とそれを取り巻くエリアにお住まいのゴルファーが圧倒的に多い。それは次代を担っていくジュニアの数も、シニアの数も多いということです。ゴルフを生涯スポーツとして捉えるのであれば、人口が多く、近くに住む家族の中にゴルフをしているお爺さんから孫の世代まで縦のつながりが存在することは、理想的だと考えています。こうした地域の特性を踏まえた施策も必要でしょう。それぞれの年齢層やゴルフ場までの距離を考え、競技だけでなく、ゴルファーが交流できる場が提供できないかと思ったりもします。

――毎年、事業計画を策定されていますが、これから特に力を入れていきたいことがありましたら、教えてください。

佐藤理事長  この1月、ゴルフ振興委員会を立ち上げ、日本ゴルフ協会(JGA)のゴルフ振興推進本部の副本部長でもある吉田裕明さんに委員長になっていただきました。これはJGAが定款を変更し、ゴルフの普及、振興を第1番目に掲げられたことに呼応したものです。ゴルフ振興の中に、競技運営があり、ジュニア、シニア向けの施策があり、健康面への貢献があると認識しています。競技団体であると規定すると、活動は競技だけに目が向いてしまいがちですがゴルフの振興となると、すべての要素が入ってきます。そういう幅広さを活動の中に取り入れたいと考えて、ゴルフ振興委員会を立ち上げました。加えて、1都10県のそれぞれのエリアを担当する常務理事制度も導入しました。これは、KGAの考え方に各都県も呼応し、一緒にゴルフの振興を図ろうというメッセージです。もちろん競技は重要です。これからは、常務理事制度と振興委員会を加えた委員会活動を柱にして、KGAの運営をしていきたいと考えています。

吉田委員長  佐藤理事長は、ゴルフを統括するJGAをしっかりとサポートするという方針を打ち出されています。JGAが提唱するゴルフの振興策にきちんと対応するため、KGA内にゴルフ振興委員会ができたと承知しています。佐藤理事長が先ほど、各都県を担当する常務理事制度の話をされましたが、ゴルフの振興策を活発に行うためには、都県のゴルフ連盟や、各都県に存在するプロ会などそれぞれの加盟団体などと連動していく必要があります。そこで行われる活動をしっかりと支援する、または方向性を示すことが大事です。

振興策として、大きく二つのテーマが挙げられています。一つは「ゴルフと健康」で、もう一つが「女性とゴルフ」です。JGAでも、その二つのテーマに沿って活動を予定していますので、関東でも呼応して動けるよう、ゴルフ振興委員会の中に、「ゴルフと健康部会」「女性とゴルフ部会」を立ち上げました。各部会長には、若さとやる気にあふれた方になっていただきました。KGAとしては、各部会が動きやすい体制を作り、現場の方々が力を発揮していただけるようにサポートしていきたいと思っています。

――関東ゴルフ連盟には、WAG(注1)の活動に見られるように、以前から振興策に取り組んできた歴史があります。他に先駆けて、「ゴルフと健康」をテーマとしたWAGの活動を実施した経緯を教えてください。

佐藤理事長  WAGの基本的な立ち位置は、「ゴルフというものを、どう捉えるか」だと考えています。華々しいプロの活躍であるとか、スーパールーキーが取り上げられがちですが、社会の高齢化を踏まえて考えると、ゴルフは基本的に楽しみと健康を提供するものだと思います。関東ゴルフ連盟は、ゴルフと健康の関係について、自分たちができることから始めてみようと考え、共鳴していただけた倶楽部の皆様と行動を起こしました。高橋正孝元理事長はじめ皆様が熱心に取り組んだことで、形が整いつつある段階です。生涯スポーツとしてゴルフを捉え、健康維持に非常に有効だという考え方の下、学術的な裏付けをもって実践していく。そうすると、ゴルフに「健康」という要素をプラスできることになります。課題は、より多くの倶楽部にご理解いただいて、どれほど活動を広げられるかだと思います。地方自治体への働きかけも重要でしょう。

吉田委員長  地方自治体、そして日本全体、さらに世界もそうかもしれませんが、健康寿命をいかに伸ばすかが社会の大きな課題になっています。地方自治体では時々、議会でも認知症対策に関する質問が出ると聞いています。WAGの活動が、ゴルフが社会に大きく貢献できることを示す一端になればと願っています。

佐藤理事長

現場力、地域力を生かす方策を

佐藤理事長  平均寿命が伸びて知的な水準がどんどん上がっている中で、現場の力がどれほど使えるかがポイントです。地方自治体は、高齢化、過疎化が進んでいく中で、どのような施策を取ればいいかという大きな課題を持たれています。それぞれの地方自治体の中にゴルフ場が存在していることを考えると、地域と一緒になってゴルフを現場力として活用することも大切ではないかと感じています。

吉田委員長  WAGは、地方自治体と一緒に加盟倶楽部が行う活動です。JGAが今年、日本シニアオープンが行われる9月11日からの週を「ゴルフ健康週間」に設定していますが、KGA管内でも、健康週間の期間中、1日で行うWAGのワンデープログラムをしっかりとやっていきます。この活動を通して、ゴルフ場と地方自治体との交流を始めていただき、深めていただければと願っています。

佐藤理事長  その地域にお住まいのシニアプロゴルファーの皆様に、レッスンなどで参加していただくことは有効だと思っています。人生経験も豊かですし、地域の人から、「あの人はプロゴルファーだ」と知られています。こういう人が加わることで、参加者は安心感、信頼感を持たれると思います。そこに自治体が加わって、「何々プロと一緒に健康作り」というリズムができてくると、いいのではないかと思います。

振興のためには、小さな成功体験を作ることが大事ではないでしょうか。プロと役所、KGA、ゴルフ倶楽部と住民の方が、一つのものを作る。最初は参加者が数人でもいいのです。まずやることで、それがメソッド(方法論)になりますから。

――委員会の中に二つの部会が設けられましたが、今年度何をされるのか、また将来、どのような事をやろうと考えられているのか、教えてください。

吉田委員長  「ゴルフと健康部会」では、先ほどお話しましたように、日本シニアオープンが開催される9月の「ゴルフ健康週間」の期間中に、できるだけ多くの倶楽部にWAGの一日プログラムをやっていただくことを計画しています。これは、やることが目的というより、WAGとはこういうものであるというご理解をいただくために行います。体験することで、倶楽部に「次は8週間のプログラムが組まれている本当のWAGを導入してみよう」と思ってもらえたり、倶楽部と自治体が一緒になって住民の健康作りに取り組むきっかけになってくれたりしたら、一番の成功だと考えています。

――健康部会はWAGという明確な活動基準、方法がありますが、女性部会は具体的に何をするのでしょうか。

吉田委員長  6月の第1火曜日を“Women’s Golf Day”と名付けて、女性のゴルフ振興を図る運動が世界中で行われています。日本では昨年、4つの倶楽部で行われたそうですが、JGAは今年、この運動を積極的に展開したいと考えています。関東でも、加盟500倶楽部のうち100倶楽部でも実施していただければ大成功でしょう。

アメリカにある“Women’s Golf Day”を統括する団体から求められているプログラムは、半日ほどのものです。まず、ゴルフに関するアクティビティを行います。練習場でのレッスンでもいいし、ラウンドしてもいい。できれば初心者を対象にしていただきたい。それが終わったら、参加者同士の社交の場を提供して欲しいというものです。この社交という部分が、日本の文化の中ではなかなか難しい気がします。日本で社交、交流というと、ともすればゴルフコンペを開催して、その後、表彰式を行うことになりがちだと思います。統括団体は、それは違うと言っています。そことの折り合いが難しいところで、そこがチャレンジになると思います。それぞれの市町村に、広報等で「今度、ゴルフ場で女性のためのイベントがあるので、参加しませんか」とか「ゴルフ場に入ったことがない方が多いでしょうから、ゴルフ場に行ってみませんか」と紹介してもらい、ゴルフ場体験会を行うことでもいいのかもしれません。理事長が話されたように、地元の女子プロゴルファーに加わってもらい、何か一緒にやることもいいかもしれません、まさに、これから作っていくところです。いろいろな形があるとは思いますが、あのやり方がいいね、といった感じで広まっていけば、将来、盛り上がっていくのではないでしょうか。現段階で、あまり型にはめるのではなく、やってみたうえで皆さんの意見を聞き、より良いものを作り上げていくという作業になるのではと想像しています。また、それぞれのゴルフ場が行ったことを、JGAのゴルフ応援サイトに積極的に投稿しますので、お互いに参考になるのではないでしょうか。

吉田委員長

小さな成功体験を積み重ね、より良いものを作る

佐藤理事長  先ほど「現場力」ということを申し上げましたが、吉田委員長が話されたのは、そういうことだと思います。形を作ると、広がりにくいものです。“Women’s Golf Day”をやることは決まっています。その時、誰が何をするかは、倶楽部ごと、地域ごとに考えていくのでいいと思います。そこから発信されてくるものが、次第に形になってくる。新しいことをする上で、そういうストリーム(流れ)作りは、とてもいい方法だと思います。どこかでうまくやると、私もやってみようということになってくるでしょう。

“Women’s Golf Day”といっても、何もゴルフをしなくてもいいと思います。ゴルフ場の食堂で、女性を対象とした食事会、お茶飲み会でもいいのではないでしょうか。ゴルフ場はとてもきれいな所だ、ゴルフは楽しそうだ、となるはずです。では、第2段階はこうしましょうというアプローチの仕方もあると思います。そこに市役所の担当の女性がいて、あなたもゴルフをしませんか、となるかもしれません。そういうインボルブ(巻き込む、関与させる)のやり方も大事なことです。

――社会への貢献や地域貢献について、KGAは何ができるのか、お考えはありますか。

佐藤理事長  KGAの持っている財産というのは、加盟してくださっている一つ一つの倶楽部です。倶楽部には、ハードとソフトがありますけれど、ハードの面でいうと、各ゴルフ場は、それぞれの地域で役に立つものを持っています。自然豊かな広大な土地がある。クラブハウスがあって、食事ができ、風呂があり、宿泊設備を持つゴルフ場もあり、地域が災害などに見舞われたときにゴルフ場は社会的に貢献できる場所になり得ます。ゴルフをなさらない方にこうした理解が深まっていくと、広い意味でゴルフの有益性が段々とわかるようになります。こういう知識や理解がないと、ゴルフはお金持ちの遊びだなどといったネガティブな印象になりがちです。

ですから、ゴルフの持っている多面性をもっと知っていただく活動をすることが重要です。例えば、市民に解放し、ゴルフ場はみんなが楽しむ場でもあるという活動です。もちろん、会員にゴルフを楽しんでもらう事が、倶楽部の一番の役割です。しかし、そのうち何パーセントかの時間、場所ではそういう地域貢献の活動をしていますとアピールすることが、ゴルフをもっと理解してもらえる事につながると思います。WAGにしても“Women’s Golf Day”にしても、ゴルフに対する理解を深めていただく、一つのアプローチになるでしょう。

倶楽部側もそのための努力をしなければいけません。子供たちのゴルフ場見学会を行って食事を提供しているゴルフ場がありますが、「あそこで食べたカレーはおいしかったなあ」という印象を持ってもらうだけでいいのです。そこからなのです。

吉田委員長  私どものゴルフ場でも、“Women’s Golf Day”と、ゴルフと健康の話を町役場に持っていって、「一緒にこうやりたいのですが」と話をしました。すると、役場の方からは「こういうのもやれませんか」という話が出てきたそうです。関東でいえば、埼玉の日高カントリークラブがやっていますが、幼稚園児を1日、芝生の上で走らせるようなことです。あるいは、季節のいい時に年配者の散歩の場として提供してもらい、体操をし、みんなで18ホールを歩くというようなことをしたい、という話でした。話が進めば、町と一緒にやるイベントが年間に3回か4回、できそうです。こういうことがゴルフ振興への手がかりになると思います。

今までも県民ゴルフデーみたいのはありましたが、それはゴルフをやっている人だけが対象でした。ゴルフ場の解放は、ゴルフをしていない人も対象になります。役場でも非常に興味を持っていて、実はやりたがっていたという発見がありました。そういうふうにいろいろな倶楽部で役所の方と話をすれば、様々な発見があるかもしれません。

――佐藤理事長はKGAでジュニア育成を長く担当されてこられて、たくさんのジュニア選手を見てきたと思います。これからゴルフを始めたい、一生懸命学びたいと思う時、何が一番大事なことになるのでしょうか。

佐藤理事長  チームKGAジュニアを作ったのが11年前です。「世界で通用するゴルファーを育成しよう」というのが結成時から続く旗印です。例えば、馬場咲希選手や吉田優利プロ、中島啓太プロのように、今、身近で活躍しているチームの卒業生たちの立ち姿を見て、ああなりたい、僕もゴルフを始めたいと思ってもらえるような存在になって欲しいという願いがそこにはあります。そのために一番大事な事は、周りから常に見られている存在だということを意識してもらうことです。そのため必要なことは、技術以上にマナーです。KGAの笠川ジュニア育成委員長は「ありがとう」「ごめんなさい」それから「はい」という言葉をしっかりと言うことを、チーム入りする時に約束させます。日常の行動を見られているということで大切な態度は、ハキハキ、キビキビ、明るい笑顔の三つです。これができればいい。あとは技術を一生懸命やってください。そういうふうにしてジュニア育成委員会はチームを作ってきました。コアな部分は何というと、アスリートとして人間力というか人間性を高め、みんなから愛されることです。そういう指導方針が今、高校の部活などにも広がっていることをうれしく思います。

親は「うちの子は大丈夫」と思いがちですが、「ハキハキ、キビキビ、笑顔」ができていない子も多くいます。でも、畑岡奈沙選手が日本女子オープンに勝ち、アマチュアで日本一の女子ゴルファーになった時、「あの子は、ハキハキ、明るい笑顔だよね」と話しが広がって、子供たちの態度が大きく変わりました。

新型コロナまん延で、屋外スポーツであるゴルフが見直され、若いゴルファーが増えました。ぜひ、周囲から愛されるゴルファーになり、仲間を増やし、ゴルフを長く続けていただきたいと願っています。

――ご自身もゴルフを楽しんでおられますか。

佐藤理事長  体を痛めていますが、9ホールなら何とかできます。半分ヨタヨタなのに楽しんで、シャワーを浴びて、サンドイッチを食べて帰ってくる。これから暖かくなったら、朝7時から早朝ゴルフをします。歩いているだけのようなものですが、でもたまにナイスショットが出るからうれしい。仲間とプレーすると、お互いのヘボショットを笑い合えます。これも楽しみかなと思っています。ウェルエイジング(注2)の見本になりたいものです。楽しくて健康にいいゴルフがさらに盛んになるよう、振興策をぜひ、成功させたい。自分が高齢者だけに、余計にそう思います。

 

注1 WAG=ウィズ・エイジングゴルフの略称および活動を指す。2016年、関東ゴルフ連盟、支配人会連合会、日本芝草研究開発機構、日本プロゴルフ協会、日本女子プロゴルフ協会によって構成された団体・ウィズ・エイジングゴルフ協議会(2022年2月解散)が、国立長寿医療研究センター、東京大学、杏林大学と共同で、認知症予防におけるゴルフの効果検証のための研究を行った。ゴルフをしていない65歳以上男女106名を集め、半年間、週一回ゴルフをする群としない群に分け、両群の認知機能等を比較した結果、ゴルフをした群の記憶機能が改善されたという結果を得て、2018年にイギリスの公衆衛生学誌「Journal of Epidemiology and Community Health」に論文発表をした。R&Aからも、研究成果が高く評価された。

注2 ウェルエイジング=加齢に抗うアンチエージングではなく、年齢とともに魅力を重ねていく生き方のこと。

 

構成・髙岡和弘(情報シェアリング部会委員)

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