『ゴルフ特区』静岡県 スクールプロジェクトでゴルフ振興

(右:右島学・静岡県ゴルフ場協会会長(ヤマハリゾート社長)/左:吉田真之・同協会事務局長)

気候温暖な静岡県は、プロトーナメントの舞台となることが多く、男子の三井住友VISA太平洋マスターズ(太平洋クラブ御殿場コース)、ヤマハレディースオープン葛城(葛城ゴルフ倶楽部山名コース)など今季もツアーは男女計3試合(ほかに女子ステップアップツアー1試合)を開催。ゴルフ熱が盛んで、静岡県ゴルフ場協会では「ゴルフ特区」を標ぼう、ゴルフ振興を図っている。2013年からは学校の授業でゴルフを行う「スクールゴルフプロジェクト」をスタートした。右島学・静岡県ゴルフ場協会会長(ヤマハリゾート社長)、吉田真之・同協会事務局長にゴルフ事業の取り組みなどについて話を伺った。

――スクールゴルフプロジェクトとは?

右島会長「県教育委員会や県私学協会とタイアップして高校59校、小中学校12校で、体育の授業として、ほかに部活などの形で計89校にゴルフ・スナッグゴルフを扱ってもらい、12年間で延べ30万人以上の生徒・児童に体験してもらっています。15人の生徒に対し、県プロ会に所属するプロ1人を講師として派遣し、年12回スクールを開催。学校のグラウンドや体育館をメインに、近隣の練習場で行うことも。参加する生徒、児童のほとんどは初めてクラブを握る子供ばかりです。授業は、高校だと5、60分。体育館やグランドにマットを敷き、本物のクラブでスポンジボールを打ちます。クラブやボール、人工芝マット、アプローチ用ネット、パターマットなどを無償貸与するなど、費用は当協会が負担。ゴルフ場体験の希望があれば、最終回にコースを3、4ホール回ったり、練習場を利用したり、施設見学を行っています。教材としてグリップ、アドレスからスウィングなどについて説明した授業教本を一人ひとりに配り、学校にレッスンDVDも配布しています」

吉田事務局長「当協会は1979年に設立。以前は『グリーンバンク』としてプレーヤーから50円の寄付を頂き、松くい虫対策やゴルフ場への進入路整備などを行ってきました。協会加盟ゴルフ場は69あり、13年に緑化基金から『ゴルフ振興基金』となったのを機に事業内容を変更、振興基金約1億5000万円を原資に、プロジェクトを主力事業として進めています。ゴルフは子どもたちにとってはちょっと縁遠く、事前にアンケートをとったら、『おとなのスポーツ』『お金がかかる』という感想が多かったが、実際に体験してみると『面白かった』『スポーツ、球技は苦手だけどうまく出来た』という回答が結構あります」

右島会長「思うに、このプロジェクトは学校のスキー教室にちょっと似ているかも。スキーは靴の履き方から始めボーゲンへと進みますが、ゴルフもまっさらな状態から基礎を覚えていきます。プロジェクトでゴルフの楽しさを子どもたちに伝え、2、3人でも『ゴルフは面白い』と思ってくれる生徒が増え、ゴルフが普及、裾野が広がってくれればいいですね」

吉田事務局長「プロジェクトに協力してくれるプロは、街の練習場などでレッスンしている人が多いのですが、子どもたちの中には『先生、僕のことを覚えていますか?〇〇高校で教えてもらいました』とか、ゴルフ場で『以前、スクールプロジェクトでここに来ました』という子もいますよ」

――協会では同プロジェクト以外に、どのような事業を?反響や成果はいかがでしょうか。

吉田事務局長「協会加盟コースにお願いして、日曜日に小中学生を対象にしたジュニア教室も年35回行っています。定員20人で、4人に1人、プロがついて指導します。ゴルフ場のドライビングレンジなどで練習後、コースを4、5ホール回ったりします。親の経済的負担を考え、参加料は1000円。ただ、県の練習場協会に協力いただき、練習場で使えるクーポン券1,000円分を渡しているので、実質ゼロ円です」

静岡県ゴルフ場協会『ゴルフ場お仕事紹介BOOK』

右島会長「我々の活動は、ゴルファーを増やす、ゴルフを盛り上げるのが目的ですが、プロジェクトなどを通じて『ゴルフ場で働きたい』という学生も出てきています。ご多分に漏れず、キャディやグリーンキーパーなども人手不足で、リクルートがうまくいかないケースも多いのですが、ここ数年、『ゴルフに興味を持って応募しました』と、プロジェクト経験者からの就職希望者は増えていますね。私どもの葛城GCでも、地元採用のキャディさんたちがいます。プロジェクト活動は、ゴルファーを増やすだけでなく、「もっと広がりを持っているんだ」と実感しています。協会では『ゴルフ場お仕事紹介BOOK』という小冊子をつくり、学校に配布しています。キャディやコース管理、フロント、レストランなどの仕事を紹介したものです。学生にはいろんな可能性があることを知ってもらいたいですね。地元テレビ放送で、PRのCMも流していますよ」

――女性ゴルファーも増えているのでしょうか?

右島会長「私どもの話ですが、葛城GCは名匠・井上誠一さんの設計で、開場当初は山名コースにレディースティーがありませんでした。女子プロも苦戦するような難コースで、女性プレーヤーからは、不評の声も聞こえてきました。谷越えホールで『どうせ届かないから、ボールがもったいない』という方も。以前は女性比率が一けた台でしたが、10年ほど前にパー4ならウッド2回でグリーンに近づけ、寄せワンを狙えるようにと、シルバーティーの前方にレディースティーをつくったら、今では女性比率が10%以上に。この先、20%を目指しています」

――将来はスクールプロジェクトなどをいかに継続、発展を?

右島会長「静岡県はゴルフ場も多いし、年間を通してプレーできて環境に恵まれています。県内には高校が135、6校ありますから、静岡のすべての高校でゴルフを学べるようにしたいですね。プロジェクトの経験をもとに、ゴルフ場で働いたり、県外でも構わないのでメンバーになったり、ゴルフの裾野が広がればいいと考えています。また『メードイン静岡』で、県内から有力選手が出てほしいですね」

吉田事務局長「プロジェクトを軸に、まずはゴルフ普及を。生涯スポーツのきっかけになればいいですね。ゴルフ業界では、今後、高齢化が進んで、ゴルファーが減るのではという懸念があります。いかに長くゴルフを楽しんでもらうか。また、女性にもっとゴルフを楽しんでもらいたいですね」

 

構成・吉良幸雄(情報シェアリング部会委員)

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