ゴルファーなら誰しも一度は達成してみたいエージシュートを20年以上も達成し続けている「鉄人」がいる。よみうりゴルフ倶楽部、東京よみうりカントリークラブなどのメンバーとしてゴルフライフを送っている田中菊雄さんがその人だ。1935年(昭和10年)生まれ、今年3月で91歳の田中さんは、71歳で初のエージシュートを達成してから、現在までにその数が1700回(2026年2月19日現在1,753回)を超えている。2018年には、ゴルフとエージシュートの素晴らしさを全国に発信するために、一般社団法人「日本エイジシュートチャレンジ協会」を設立、その代表として幅広く活動している田中さんに、ゴルフとエージシュートについて、健康について、そして協会の活動についてお話していただきました。
――ゴルフとの出会いと初めてのエージシュートについて。
出身の島根県松江市から22歳のときに上京して運送業をやっていました。お客さんの社長さんに勧められてゴルフを始めたのが35歳のとき。そしたら「こんな面白くて素晴らしいものはない」と夢中になりました。続けていくためには仕事もしっかりやらなきゃいけない。一生懸命にやって、ゴルフを通じてさまざまな人々とつながりもできました。64歳のときによみうりゴルフ倶楽部でバックティーから回って、ハーフ32スロトーク。これならできるんじゃないかなと思って、エージシュートに挑戦することを始めました。初の達成までには7年間かかりました。
2006年の6月、富士国際CC富士コースを70で回りました。議員さんのコンペだったのですが、当時はエージシュートについて知っている人が少なくて、「後になって調べたら大変なことだった」と気づいた人たちがホテルに集まってパーティーを開いてくれました。
――その後、80歳で100回目、82歳で200回目と達成が続き、89歳で迎えた2024年4月に1500回となり、90歳を超えても達成回数は伸び続けて1700回を超えました。
エージシュートという目標がありますよね。そのためには健康でなきゃいけない。その健康のためには食生活もしっかりと考える。足がだめになってもだめだから、歩くことを大切にする。目標があれば、そのための前提条件を、さらにその一つ前に必要なことはと考えていました。
ゴルフを続けていくには仕事もうまくいっていないとね。会社をつくって年齢をかさねていくと、「自分が社員だったら、どういう社長についていくか」ということを考えてきました。
それと、ゴルフは一人ではできないので、仲間も大切です。そのためには威張ったことはできない。いつもありがとうという気持ちを持つこと。人に嫌われないようなプレーヤーでありたいと心がけています。
1日1万5000歩を歩こうと思っていますが、第1打で自分が飛ばなかったときに歩いていくとカートの方が先行しますよね。だからそういう時にはカートに乗って行く。他の人が自分よりも先に打つときは歩いて行く。そんな気配りもしています。同伴競技者にもキャディーさんにも嫌われないゴルフをやっているつもりです。
ゴルフはいつも人に見られているスポーツです。だからノータッチ、完全ホールアウトでプレーする。自分のプレーが人にどう見られているのかを考えることも大事です。
――年齢を重ねても次から次へとエージシュートが達成できる。その秘訣は。
私のゴルフは上から下へ力を使うスタイル。年齢を重ねると、大き目のクラブを使ってコントロールしようとして、スイングが小さくなりがちですが、私の場合は、短めのクラブ、これ以上飛ばないというクラブを持ってフルスイングしていく。だからスイングが小さくならない。これが年をとってゴルフが悪くならない要因の一つだと思っています。私はグリップやスタンスを工夫して、低い球で絶対に左にしかいかないような打ち方になってきました。フェアウェイの右端あたりにスタンの方向を合わせて振ると、ちょうどよい方向に飛んでいくわけです。
若いころに栄光のあった人はどうしてもそのスタイルにこだわってしまいますが、年齢を重ねていけば、やはり変わっていかないと、うまくいかないと思います。
それと、ゴルフを通じて多くの仲間に恵まれてゴルフを続けていけることも大切な部分です。
――2018年に「日本エイジシュートチャレンジ協会」を設立されました。
エージシュートは若い人にはできない。年寄りだからできる。こんな素晴らしいものはないと思ったんです。健康でなければできないし、健康であるためには目標が必要です。だから、エージシュートを目標にすれば、皆が健康になっていくと思うのです。仲間から「こんな素晴らしいものを、もっと知ってもらって、挑戦する人を応援できる協会を作ろう」という話が出てきました。思いたったら、やった方がいいじゃないか、という性格なので、この協会をスタートさせることになりました。そしたら、役所への手続きと折衝やら、経理やら、大変なことがたくさん出てきましたが、みんなに助けてもらってます。
こういう組織を生んでしまったのだから、みんなに育ててもらわないとね。
――協会は、その目的として次の5項目を挙げています。
- エージシュートを達成したゴルファーの功績を讃える場と創る
- シニアゴルファーの偉業・目標としてのエージシュートを位置づける
- エージシュートにチャレンジすることで健康寿命の延長を図る
- ゴルフ関連団体と協力し、ゴルフ全般の活性化を図る
- エージシュート達成者と協会によるチャリティー、ボランティア活動等を実施し、社会貢献につなげる
まず、エージシュートの素晴らしさを多くの人に知ってもらうこと、挑戦できる場を作り、チャレンジすることを応援することが大事です。そのために、多くの人の協力を得て、チャレンジコンペやカップ戦を開いています。全国にその輪を広げていきたいと考えています。
昨年6月には東京よみうりCCを舞台に、ゴルフ専門チャンネルの「ゴルフネットワーク」さんの主催で、チャレンジカップを開催していただきました。137人が参加して6人がエージシュートを達成しました。私もその一人で、87で回りました。
協会はいま個人会員が約300人、法人会員も10社を超えています。協会のことを一人でも多くの人に知ってもらって、その輪をどんどん広げていきたいと考えています。

――協会ではエージシュートの認定基準を設定しています。
基本距離目安 男性6100ヤード以上、女性5000ヤード以上。いずれも▽キャディーまたは同伴競技者・コース承認▽1ラウンド(18ホールストロークプレー・ノータッチ・完全ホールアウト)▽満年齢、あるいはそれ以下でのスコア達成
基準が甘くなると努力しなくなってしまいます。目標に向かって努力すること、挑戦することが大事だから、基準が必要と考えました。このスポーツは飛ばないとできないというわけではありません。第1打が200ヤードになっても、150ヤードになっても、3打目でグリーンに乗ればパーもとれます。いつも人に見られているスポーツですから、正々堂々と目標に向かうことが大事なのです。
――高齢化社会の中で、ゴルフとエージシュートの素晴らしさは。
ゴルフは人との勝った負けたじゃなくて、コースと自分自身の戦いでもあるところが素晴らしいと思います。年齢を重ねても健康であればできるスポーツです。他のスポーツをやっていた人も年をとるとゴルフにやってくるという生涯スポーツです。
そして、人生を健康で長生きするためには目標が必要です。エージシュートは、その目標を達成するために、健康であること、仲間を大切にすることに努力するところが素晴らしいのです。
▽田中菊雄氏略歴
田中 菊雄(たなか・きくお)
1935年(昭和10年)3月3日生まれ、島根県松江市出身。
富士総合食品(株)など4社をまとめる北山グループの取締役会長。35歳でゴルフを始め、71歳で初のエージシュートを達成して以来、1700回を超えるその記録をすべてファイリングしている。


