深い緑が美しい東松苑ゴルフ倶楽部(栃木県足利市)の理事を務める広沢祥倫理(ひろさわ・よしつぐ)さんは88歳の米寿を迎えた昨年、同クラブで年間89ラウンドを回り、「もう一つのエージシュート」を達成した。
「気がついたら年齢よりたくさん回っていた」と笑う広沢さんに、ゴルフの楽しさ、続ける秘訣、ゴルフと健康についてお話を聞きました。
――ゴルフと出会われたのは。
埼玉県の川口市で精密機械の電子部品加工会社を経営していました。50歳前に、お客さんにゴルフを勧められて、7番アイアンをもらったのがきっかけでした。性格ですかね。探求心が沸いてきて、仕事でも趣味でもとことんつきつめないと気が済まない。電子部品は不良品が出ると大変なことになるので、メッキの技術をつきつめていく。ゴルフでも自分の体にあったクラブを求めて、専門の工房でシャフトを調整してもらったりして、そんなことも楽しかった。
それとゴルフのときは無心になれるのがよかったですね。とにかくボールを見たらひっぱたく、という感じでね。ストレスがなくなる。
――東松苑ゴルフ倶楽部には開場後まもなく入会されています。
ご縁があって、工事中のころから見学に行きました。「このコースは平坦で年齢を重ねても楽しくプレーできる」と勧められて入会しました。55歳で仕事を引退するつもりでしたが、なかなかそうもいかない時期で、そのころは月1回ぐらいのペースでした。コースがとても家族的で、朝は「おはようございます」と出迎えてくれて、こちらも気持ちよくプレーできた。
仕事が電子部品ですから、技術が日進月歩で新しいものが出てくる。こちらもそれに対応して準備していかないと追いつかない。ゴルフのほうでも、新しい素材が出てくるころでしたから、クラブにも探求心が刺激されました。ヘッドは自分で変えられないけど、シャフトは自分考えていろいろ調整できる。専門の工房にお願いして、先調子のものがいいとかね。
――スコアもよくなっていったのでは。
ハンデキャップは9までいきました。仕事が忙しくなると少し落ちましたけどね。
会社を長女に譲るころに、ゴルフがとても好きで私よりも上達した妻が亡くなって、東松苑の近くに別宅を構えました。それからは、趣味を中心にしています。ゴルフとバラの栽培。どちらもとことんこだわります。
――ここまでゴルフを続けてきて、ゴルフの楽しみ、魅力は何でしょうか。
健康でいられることですね。もちろんよく歩いて、体を動かしてね。このコースは「緑のじゅうたん」と言われるほど芝がふかふかで歩くのが好きになります。
それだけじゃなくて精神的にもいいですよね。ゴルフはつきつめていくといろいろ悩みも出てきます。しかし、それを悩みにしないで、自分から、こうすればいいんじゃないかと、探求していく。道具にもこだわる。パットが入らなければパターのせいにする。自分にあったドライバーが見つかれば振りやすくて距離もでますから。
こちら(東松苑)の近くに別宅を構えてから1年目に胃がんが見つかって手術してもらいました。先生に「悪いところはとってください」とお願いして3分の2を摘出して、全快してからは、新しく伴侶になってくれた人と一緒に、楽しく趣味にのめり込んでいます。病院でお金を使うよりはゴルフと趣味にお金を使いたいですよね。
――スコアのエージシュートは。
75、6歳のころに初めてでましたね。それから7、8回出ましたけど、プライベートゴルフやコンペでした。そこでクラブの競技会で何とかだしたかった。それが2年前に月例競技会で達成できて会員の会である東松会と倶楽部からお祝いをいただきました。
――10月で89歳になられますが、今年ももう一つのエージシュートですか。
きょう(5月22日)で39ラウンドですかね。去年よりペースが早いから、何とか達成できそうです。
(同席していた東松苑ゴルフ倶楽部の中島和也社長が、100歳で100ラウンドを、と話すと)
もっとやりたいですね。元気に回っていたいです。
――後輩ゴルファーに、ゴルフを続けていくためのアドバイスを。
スコアは気にしないことですね。気にしだすと切りがないですから。人間は機械じゃないから、同じショットはできない。だからボールがあっちにいったり、こっちにいったりしても気にしない。当たり前と思って次のショットやパットに向かっていく。
それから、ゴルファーもコースも一緒になって植栽や芝草、ゴルフコースを大切にしてほしいです。それが気持ちよく元気にプレーできるもとですから。
取材/文・古谷隆昭(情報シェアリング部会・委員)