愛知県犬山市に隣接する可児市は、明智光秀の生誕地としても知られ、8つのゴルフ場がある。日本ラインゴルフ倶楽部では、1981年に国内最高峰の大会である日本オープン選手権(優勝は羽川豊)が行われた。今年7月には富士カントリー可児クラブ志野コースで、日本プロ選手権が開催される。冨田成輝(とみだ・しげき)市長に、歴史のある緑豊かな街と、ゴルフとのかかわりについて伺いました。
――可児市では2016年に「ゴルフのまち可児活性化推進事業」を創設していますね。
冨田市長 可児市の基幹産業は製造業で、製造品出荷額等は岐阜県では各務原、大垣市に次ぐ3番目。商業も盛んで、大規模店舗数は岐阜県では岐阜市に次ぐ2番目です。観光で食べている街ではありませんが、8つのゴルフ場(計225ホール)の利用者は年間50万人以上で、コースのレベルも高く、プロの試合も何度か行われています。ゴルフ場利用税交付金は、コロナ前は2億円ほどいただいており、市にとっては重要な産業です。ぜひゴルフ場を応援しようと考え、市のゴルフ協会に補助金を交付し、『ゴルフパラダイス可児』をキャッチフレーズに、ゴルフを盛り上げてもらっています。コース来場者は、コロナ後は回復傾向にありますが、もうちょっと来ていただければと思っています。市としても、ゴルフ場へのアクセス道路の改修などインフラ整備に利用税を充てています。
市の人口は約10万人ですが、子どもの数が結構多く、日系ブラジル人やフィリピン人ら外国籍の子どもがたくさんいるのが特徴です。県内の外国人小・中学生の4人に1人は可児市在住と言われるほど、飛びぬけています。アパートだけでなく、一戸建て住宅でも表札が横文字の家が増え、生活満足度は8割を超え、すっかり地元に定着しています。日本では人口減、少子化対策が問題になっていますが、そんな子どもたちが将来の可児市を支えてくれるようになるでしょうし、若い世代にはゴルフの楽しさを知り、気軽にプレーしてもらえればと思っています。
――ジュニア育成策としてどんなことを?
冨田市長 小学1年から中学3年を対象としたゴルフスクールを開催、ジュニアの競技会も年2回行っています。スクール生のなかには日本語が堪能な外国籍の子どももちらほら。そのほか、毎週日曜日の午後12時から3時まで、市内の練習場で小学4年~高校3年までのジュニアや、可児市在住・在勤者向けの『バーディークラブ』を開催、プロに来てもらいレッスン会を行っています。またジュニア大会の優勝者を1人、トッププロも出場する春の岐阜オープンに派遣しています。推進事業がスタートする前を含めれば、16回を数える市長杯は人気があって、すぐ出場枠がいっぱいになり、市民にもだいぶ浸透していると思います。私の友人にもゴルフ好きが結構いて、表彰式では顔見知りの人をずいぶん見かけました。
――今年7月には富士C可児C志野で伝統の国内メジャー大会、日本プロが開催されますね。
冨田市長 大きなイベントで、可児市を知ってもらうには、もってこいの機会です。特産品としてはちょっと地味ですが、里芋、栗があります。焼き物の『美濃桃山陶』も有名です。ギャラリープラザにPRコーナーを設けて、もっと大勢のゴルファーにゴルフ場に来ていただけるようにしたいですね。可児は交通の便もよくて名古屋から車で1時間ほど。コース来場者の大半は、名古屋をはじめ愛知県内からです。
可児は有名な観光地ではありませんが、工場など働く場所は少なくなく、買い物や病院にも困ることはありません。地震は少ないし、冬場も最近はめったに雪が降ることはありません。自然環境にも恵まれ、市民の方に『(この先)どんな街にしたいか?』と尋ねると、『今のままで』という声をよく聞きます。ほどよい田舎で、暮らしやすい街だと思いますね。『今のまま』プラス、少しでも街が良くなれば、と考えています。いろんなスポーツがあり、趣味も多様化していますが、ゴルフは自然のなかでプレーし、健康にもいい。市民のみなさんには、ゴルフを長く楽しんでもらえれば、と思います。
私も昔はゴルフに親しみ、1990~91年のニューヨーク駐在中は毎週のようにラウンドしていました。パブリックコースはお世辞にも立派とはいえませんが、料金は安く、気軽にプレーできましたね。ただ、この20年ほどは、忙しくて時間がなく、クラブを握る機会がありません。テレビもニュースを見るくらいで、ゴルフトーナメントをテレビ観戦することはほとんどありません。運動と言えば、もっぱらウオーキングですね。
――「ゴルフのまち可児」「ゴルフパラダイス可児」をアピールするための、今後の課題についてはどうお考えですか。
冨田市長 市のゴルフ協会と連携して、各ゴルフ場を応援したいと考えています。SNSを使った情報発信などにも積極的に取り組み、可児の良さをPR。来場客を増やすとともに、子どもたちがゴルフを楽しめるようにしたいと思っています。
冨田成輝氏 1953年1月生まれ。岐阜県庁を経て、2010年可児市長に初当選。現在、4期目。
取材・吉良幸雄(情報シェアリング部会委員)