社会貢献をゴルフの目的に据え、ゴルフの楽しさ、魅力を発信中:プロゴルファー笹原優美さんインタビュー

――笹原優美プロは、2016年のレギュラーツアーにフル参戦するなど数年間、日本女子プロゴルフツアーで活躍され、今はYouTubeなどでのレッスンが人気を集めています。公式インスタグラムを見ると、「#ゴルフを通じて社会貢献 #表現者 #凡人から一流へ」と三つのハッシュタグが付いています。これらのハッシュタグを付けた理由を説明していただけますか。

笹原プロ  ゴルフを始めたきっかけからお話しします。11歳の時、父親に勧められたからです。子供のころは、様々な習い事をしていました。中学では吹奏楽部に入り、トロンボーンを吹いていました。ただ、父がゴルフをしていて、自分に一番させたいのはゴルフだろうと感じて、高校はゴルフ部のある所を選びました。

――自分の意思で進路を決められたのではなかったのですか。

笹原プロ  当時、自分には特別な目標はありませんでしたし、父の期待に応えたいという思いが強かったですね。学校の部活以外にも、父の知人の紹介でプロのレッスンを受けました。そのころの自分には、意思も目標もなかった。周りからどう期待されているかによって流され、漂っている感じでした。

――そのような消極的な人が、レギュラーツアーに出場するまでになった。変わるきっかけはどのようなことでしたか。

笹原プロ  プロのレッスンも受けたとお話しましたが、そこで和田泰朗プロと出会ったことです。やりたいという自分の意思がないと、努力できないし、上達もしない。人間性を変えることから始めることを、教えてもらいました。「ゴルフをしたいわけではないし、プロになろうとも思わない」と話したら、和田コーチから、「それでは、ゴルフをする目的を見つけよう」と言われました。私は、小さい頃から漠然と、発展途上国の子供たちを助けたいとか、誰かのために役に立ちたいという気持ちを持っていました。その話をしたら、和田コーチから「それでは、ゴルフをするためのイデオロギー、意思は社会貢献のためということに決め、その目的をかなえるためにゴルフをしよう」と勧められました。そのことによって、受け身だった人間性を変えることになり、すごく大きな学びになったと思います。高校2年生の時でした。

――素晴らしい転機でしたね。大学の付属高校にいたのに進学をせず、プロを目指したのは、やるべき目的が明確になったからですか。

笹原プロ  ゴルフをするとして、実力がなさすぎるので、このままでは大学に行ってもプロにはなれないだろう。でも、もっと上手になるためには、大学に行かずにゴルフの練習をしたほうがいいのでは、と思いました。

――実力がないといっても、2010年の関東ジュニアゴルフ選手権で19位に入り、翌年は関東女子ゴルフ選手権で21位になって、日本女子アマチュアゴルフ選手権に出場するほどのレベルになっていましたよね。

笹原プロ  サボったりする性格ではなかったので、努力はしていました。それに、ゴルフはスイングのレベルは低くても、ある程度、スコアを作ることができます。集中力と気合でスコアをまとめていました。それに、選んだ道を正解にするために、全力で頑張らなくてはと思っていました。

撮影協力 森永高滝カントリー倶楽部

――プロテストには合格できなくても、単年登録プロとして、2017年にはレギュラーツアーで19位に入っています。笹原プロは、試合後、ギャラリーのサインの求めに最後まで応じるファンサービスの姿勢が有名です。

笹原プロ  ツアーに出る資格は得られるようになりましたが、賞金をすごく稼ぐわけでもないので、募金や寄付で社会貢献をする立場にはなれませんでした。でも、私の姿を応援してくださる方に見てもらうことで、その人たちの生きる活力になったり、自分も頑張ろうとか少しでもハッピーな気持ちになったりしていただけたら、それも社会貢献の一つだと考えています。

――今、YouTube動画でのレッスンが好評で、インスタグラムのフォロワー数が4万5千人になっています。レッスン動画を見た時、理論、技術はもちろんですが、ゴルフの楽しさを伝えようとしているように感じました。どのような気持ちで、レッスンに臨まれていますか。

笹原プロ  インスタグラムに掲げている、ほかの二つのハッシュタグ「#平凡から一流へ」「#表現者」につながるのですが、自分は怪我をしやすかったり、最初はゴルフをする意思がなかったり、アスリート、そしてゴルファーには絶対に向いていなかったと思っています。そのような私が努力を重ねてきたから、今、プレーやレッスンをする姿を違和感なく見てもらえるのだと思います。向いていなかったからこそ、全然うまくなれないとか、腰が痛くてといったアマチュアの方と同じ立場、視線で見ることができると考えています。早い時期からいいコーチに出会ったりしなければ、プロとアマチュアでは、まず素質が大きく違います。私は、アマチュアのレベル、素質から、ここまできたレアなケースだと思っています。ですから、アマチュアの人の気持ちがわかるし、自分が歩んだプロセスをうまく言語化できれば、初心者の方、力がなくて困っている女性に、こういう方向で頑張ればうまくいきますよ、と伝えられると考えています。さらに、伝える質を高めるために、自分自身が成長していかなければいけない。そうしないと教えられる事が、止まってしまいます。有名なプロと違って、テレビに映ったり、報道されたりすることがあまりありません。ですから、自分で発信して、自分という人間、行動、目標を知ってもらう。こうした表現者としてゴルフをしているという感覚があり、「#表現者」のハッシュタグを付けました。

――日本の女子ツアーは、プロテスト合格者だけに出場権が制限されてしまいました。笹原プロは、毎年プロテストに挑み、試合の場を求めて中国や台湾ツアーに挑戦されたのも、自分の成長のため、一流になるためなのですか。

笹原プロ  日本では、日本女子プロゴルフ協会のツアー競技がトップにあり、そこで活躍することが選手本人も、応援してくださる方も一番求めていることです。そこに挑戦できる機会がある限り、挑戦したいと思っています。ただ、自分の成長スピードに対して、壁の方がどんどん高くなっているのが現状です。でも、自分自身のなりたい選手像に向けて高めていくためにも、プロテストは受け続けています。

――運動生理学や動作分析といった分野も勉強されているそうですね。

笹原プロ  本などで学ぶのではなく、自分が経験して感じたことを言語化している感じです。腰と首にヘルニアがあって、中学のころから25歳ぐらいまで、日常生活すら怪しいほど体が悪い状態でした。これを直さないとゴルフを続けることができないと考え、23、24歳の時から勉強を始めました。身体操作系や野球のトレーナーの方に学びに行ったりして、それで変化が起きたことをレッスンにつなげたり、発信したりしています。パワー不足に悩む女性や、腰痛に悩んでいる方に、伝えていきたいですね。

――コロナ禍で、屋外スポーツであるゴルフの良さが見直され、ゴルフを再開した人や、若者や女性のゴルファーが増えたと言われています。ゴルフの現場にいる笹原プロも、そうした傾向は感じられていますか。

笹原プロ  ゴルフ場、練習場とも、若い人、それに女性が増えました。自然の中、解放された空間で、老若男女が楽しめるスポーツは、ゴルフしかありません。プレーをしてみて、自然の素晴らしさや、難しいからこそ成長する喜びを味わった方も数多くいるでしょう。

――ゴルフは、なかなか球にうまく当てられないし、バンカーで苦しむなど、けっこう難しいスポーツだと思います。ゴルフを始めた方に続けてもらうには、どういう事が必要だと考えられていますか。

笹原プロ  そうした方に、こうしたら上手になれる、案外、簡単かもしれないと感じてもらえる発信をすることが、私ができることだと思っています。1人でも2人でも、ゴルファーを増やしたい。そのために頑張りたいですね。ゴルフのいい所の一つが、マナーや身だしなみを大切にしていることです。ルールやマナーを緩くすれば、もっと間口が広がるという考えもあると思いますが、むしろマナーなどを守ることでその人の、そしてゴルフのイメージを高め、プレーヤーに誇りを持ってもらえるようになると思います。こちら側の発信のやり方次第だと思います。マナーは何のためにあるのか。気分が良くなる、相手とのコミュニケーションが良くなる、後ろを回る人への思いやりが生まれる、コースへの感謝の気持ちを表現するなど、そういうプラスの面を、わかりやすく簡潔に伝えたいと考えています。

――ゴルフの魅力について、どう考えられていますか。

笹原プロ  自分の経歴でいうと、人間性を変えるために取り組み、自分がやりたい社会貢献を実現させるためのツールがゴルフでした。難しいスポーツなので、落ち込んだり、喜んだりします。その中で結果を出すために、心の落ち着きを持てる人間に自分を変えていき、自身を成長させることができます。うまくいかないからと、がっかりするのではなく、捉え方によってもっと楽しくゴルフができることを伝え、ゴルフ人口が増えるように努めたいと思います。

――発信力、影響力のある人に、ゴルフの楽しさを伝えていただき、一緒に盛り上げていけたらと願っています。本日はありがとうございました。

 

笹原優美  東京都出身。単年登録プロの資格で、日本女子プロゴルフ協会のレギュラーツアー計64試合に出場。17年には、ミヤギテレビ杯で19位、ニッポンハムレディスで24位に入った。19年に中国ツアーに出場し、シード権を獲得。20年は台湾ツアーの出場権も得たが、両ツアーとも新型コロナのまん延で、競技が中止となった。18年に、USGTFティーチングプロ資格を獲得している。

撮影協力 森永高滝カントリー倶楽部
〒290-0528 千葉県市原市古敷谷1919
https://www.takatakicc.co.jp/

構成・高岡和弘(情報シェアリング部会委員)

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