スポーツはジェンダーの問題などをグローバルな視点から考えさせてくれる:岩崎恭子 JGA評議員インタビュー

14歳で五輪金メダル、20歳で引退、大学卒業後に本格的にゴルフ 「最初にマナーなどを厳しく教えられたのがよかった」

――14歳の時に出場した1992年バルセロナ五輪の女子200メートル平泳ぎで金メダルを獲得した岩崎恭子さんは、JGAの評議員も現在は務めています。

岩崎評議員 ゴルフとの付き合いは長いです。私は沼津市出身で、近くにはゴルフ場もあり、学生の時は友人のお母さんがキャディーをしていたり、ソフトボール部だった友人がゴルフもやっていて一緒にラウンドもしていました。本格的に始めたのは大学を卒業した後で、競泳からは引退していたのですが、ゴルフはいろいろな方と知り合うことができるし、今後のことを考えてもプラスになると、周囲の方から言われました。ただ、最初からマナーなどは厳しく教えられました。ゴルフ場によってはドレスコードもあるので、ジャケットを必ず持っていくとか、一緒に行く人にも迷惑をかけないようにするとか。今思えば、それが良かったと思います。ですが、腕前の方は最初のうちこそスゴイと褒められ、すぐに上手になるとも言われたのですが、今もその頃と何も変わっていません(笑)

――でも、テレビのゴルフ番組などでプレーしているのを見ると、プロも感心するほどのショットを放ったりしていますよね。

岩崎評議員 テレビカメラを向けられていると、なぜかうまく打ててしまうので、そう思われてしまう。どうしてなのかな。何か、いやらしいですよね(笑)。

――競泳とゴルフで共通点はありますか。

岩崎評議員 ゴルフは一人でもできるし、成績は自分次第というのは競泳と同じかなと思います。練習も自分が好きな時に行けるというのがとてもいい。また、競泳は肩の関節も柔らかくなるので、ゴルフにもプラスになると思います。ただ、体幹に関しては競泳をやっていたから強いと思われがちですが、それは違います。競泳で鍛えられる体幹は、浮力がある水の中でついてくるもの。これに対してゴルフは地に足をつけてやるスポーツなので、地面のスポーツをやってきた人の方がすぐにうまくなる。ただ北島康介君(五輪の競泳で2大会連続金メダル)だけは例外で、彼はゴルフも昔からやっていて、うまい。何でもできちゃいます。

――岩崎さんには中学1年生の娘さんがいます。子育ての時はどのようにゴルフに接していたのですか。

岩崎評議員 大学を卒業して10年くらいはゴルフをプレーしていましたが、子供が産まれてから10年間は、ほとんど出来ませんでした。娘が小学5年生になったころから少しずつ再開できて、今は楽しんでいます。女性は私と同じようなパターンが多いと思いますが、だれか子供をあずけられる人が近くにいれば、子育て期間でもゴルフはできると思います。実際、知人の女性たちも、両親に子供をあずけてゴルフをプレーしている人はいます。

アスリート仲間と女子会ゴルフ 「娘とも一緒に楽しめる時間ができています」

――アスリート仲間らとの女子会ゴルフも多そうですね。

岩崎評議員 はい、今日のゴルフも潮田玲子さん(バドミントンの元五輪日本代表)らと一緒でした。知り合いのゴルフコンペがあるとお互いに声を掛けあって参加するなど、食事会以外にも友人らと一緒に過ごせる時間が多くできます。友達のお父さんやお母さんとも一緒にゴルフに行くなど、新たなお付き合いもできて、とてもいいですよね。また、自分がプレーするだけではなく、ゴルフのトーナメントも観戦に行って、楽しんでいます。

――娘さんもゴルフはやっているのですか。

岩崎評議員 娘は今はテニスに熱中していますが、この前はゴルフ練習場に一緒に行きました。最初は全然ダメだったけど、少し教えたら形になってきて、私より飛距離が出ていました。テニスはラケットの面を使うので、ゴルフとの共通点があるのかもしれません。今度はゴルフ場で一緒にラウンドしようと思っていて、親子で一緒に楽しめる時間ができるのもゴルフの魅力ですね。

――指導者としての岩崎さんについてもお聞きしたいのですが、20歳の若さで競技からの引退を表明すると、22歳で米ミッションビエホに海外指導者研究生として留学しました。

岩崎評議員 はい、あの頃に興味があったのは、水泳人口の底辺を拡大することでした。ジュニアを指導するだけではなく、水泳を始める人のきっかけになることができたらいいなと思っていて、そのようなことを学んでみようと考えていました。日本にはスイミングスクールもあり、水泳は子供にとって最初の習い事になることも多い。その中で海外との指導法の違いは何か、また海外のトップスイマーは幼少期にどのようにスイミングスクールに通い、教えられてきたのかなどを、一年を通して勉強させてもらいました。

――その中で特に影響を受けたことは。

岩崎評議員 メンタル面の重要さです。日本のように手取り足取りで技術を教えるのはすごくいいことだと思うのですが、同時に自分自身で物事をしっかり考え、行動していくことも大切です。私は水泳が初めてとか、入り口のところに来た子を指導する立場なので、ガッチリ教えるのとは少し違いますが、そのような考えで教えるのを意識しています。

海外遠征をきっかけに復活 「メダルを含めた全てが自分だと思うようになった」

――日本は特に女性の若いゴルファーの躍進が著しいです。昨年の馬場咲希選手のように、高校2年生で全米女子アマチュア選手権のタイトルを獲得し、一日にして周囲の環境が変わって戸惑ってしまうこともあります。14歳で金メダリストとなった岩崎さんも同じ経験をされたと思いますが、アドバイスなどはありますか。

岩崎評議員 それは必ず出てくる問題なのですが、目立つことが好きな子もいれば、嫌いな子もいるので、すごく難しいんです。私の場合は、金メダルを獲得した2年後に米サンタクララで開催された大会に出場したことが、大きな転機となりました。今でこそトップの選手は合宿や試合で海外に行くことが当たり前の時代ですが、当時は海外遠征がほとんどありませんでした。すると、日本では街を歩いていても周りから見られたり、いろいろなことが聞こえたりしていたことが、何もなかった。それがとても新鮮で、そのうちに周囲から何を言われてもいいやと思うようになった。金メダルを取って大きなプレッシャーとなっていたことも、メダルを含めた全てが自分だと思うようになり、それが大きくて96年アトランタ五輪にも出場することができました。競泳は駄目になる時は一瞬で駄目になってしまうスポーツなので、自分でもあのような状態からよくやったなと思います。誰もが経験できることではないのだから、ありがたいことだと今は感じています。

―競泳で世界トップに立ち、今はゴルフも楽しんでいる岩崎さんは、スポーツ界をあらゆる側面から見つめてきました。その中で女性とスポーツの関係はどのように見ていますか。

岩崎評議員 オリンピックは最初は男子を中心とした大会でした。その中で競泳は早い段階から男女種目となりましたが、レスリングなど女性が参加できるようになって歴史が浅い競技もある。そのような歴史も含めて、スポーツはジェンダーの問題などをグローバルな視点から考えさせてくれます。そして、スポーツはそのような問題をアピールし、女性の発展や活躍する場所を増やしていくことができるとも感じています。野球のメジャーリーグでも、大谷翔平選手がこれほど活躍し、アジアにもこんなすごい選手がいると思われるようになりました。誰かが活躍してくれると、それは社会を動かす力にもなる。そのような女性アスリートが次々と誕生することを期待しています。

【取材協力】
オリムピック・カントリークラブ レイクつぶらだコース
埼玉県児玉郡美里町大字広木2461-1
TEL:0495‐76-5301

(有)ケイアイエヌ

 

構成:鈴木遍理(情報シェアリング部会委員)

 

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