中部ゴルフ連盟 会報誌2022年夏号より
いくつになっても楽しめるのがゴルフの最大の魅力。
コロナ禍で若者たちをはじめゴルフ人口が増えている一方で、シニアたちはますます元気。
そして、今回ご紹介するのはなんと超シニアと呼べる90歳代のゴルファーたちです。
みなさん、ゴルフを日常的に楽しんでいます。
超お達者90歳代を大いに見習って、心も体もハッピーになれますように!!
夫婦合わせて186歳
浜名湖カントリークラブ
守田吾朗さん95歳(ゴルフ歴55年)
守田定子さん91歳(ゴルフ歴20年)
今回のアンケートでひときわ目を引いたのが、「95歳と91歳のご夫婦が週に一度ほどプレーに来られます」という浜名湖カントリークラブからの情報だった。
信じられなかった。90歳ゴルファーでも珍しいのに、ご夫婦ともに90歳を超えており、週1のゴルフを楽しんでいる。何より、91歳女性ゴルファーの存在が信じられなかった。
会ってまた驚く。想像していたより若い。特に夫人の顔はシワひとつないほどツヤツヤだ。なるほど、この感じでは週1ゴルフもやれそうだ。ご自宅はゴルフ場の近くで、車で5、6分の距離だという。
スタート前に、しばし歓談する。
夫人はなんと70歳からゴルフを。
週1のプレーは、18ホールではなくハーフで、2人で乗用カートを使ったセルフプレーなのだという。「いつからお2人でゴルフを」と聞くと、定子夫人が微笑みながら言った。「70歳の時、私が手ごめにあったんですよ」
手ごめ?ご主人の吾朗さんがやや大きな声で捕捉した。「なに、私の、ゴルフの相手がいなくなったもんだから、女房にさせたんですわ、ハハ」
成り行きはこうだ。吾朗さんは元役人で、運輸省と建設省(ともに現国土交通省)の名古屋勤務をしていた昭和39年、38歳の時にゴルフを覚えた。「矢作ダムを造ったころでね、当時は係長で、周りからゴルフは課長からと叱られた。この浜名湖にはおじきに呼ばれて帰ってきてゴルフをやったもんですよ」
役所を辞めて浜松に戻った後、昭和50年に静岡県会議員に当選し3期12年勤め上げた。その後、65歳の時に遠州信用金庫の経営を任される。
「当時、56会(名前の吾朗をモジって)という後援会のコンペがあったんだが、定年などでゴルフをやる人が段々といなくなってね」。そこで、狙いをつけた(?)のが定子夫人。「自分の女房ならいつでもいけるだろ(笑)」。
なんと身勝手な。ただ、大正15年生まれのこんな我が道をいく性格が長生きの秘訣なのかもしれない。一方、定子さんは若い頃、名古屋で裏千家のお茶の先生をしていた。「運動が苦手で、もう、無理やりでした」と定子さん。
当時、吾朗さんは浜名湖CCの副社長をしていたが、「ここでやらせるわけにもいかないので、5時半に起きて豊橋のゴルフ練習場に行ってレッスンを受けさせましたよ。掛川のショートコースにも、高速料金を2000円も払って、連れていったなぁ」
苦労話のように聞こえるが、もとは自分のためである。
さて、ゴルフを押しつけられた定子さんはいま、どう思っているのだろう?
「最初はいやでいやで。でも、運動するようになったのはよかったと思っています。足も丈夫になったし。でも、最近は疲れるようになって、朝、こむら返りが時々起きるんですよ」
吾朗さんは柔道5段。当時の町長の頼みで昭和48年から27年間、新居中学校で柔道を教えた。静岡県代表として全国大会に5度。昭和50年は全国3位になったという。柔道で身に付けた基礎体力は仲間内のコンペでも負けない飛距離を誇った。
「でもね、90歳を過ぎてからはガタンと落ちた。いまはもう、150ヤードぐらいしか飛ばんよ。90歳までは若い衆とよく1Rしたが、最近は年に2、3回。去年と今年で体調の違いがわかるほど体力が落ちたねぇ」と吾朗さん。過去の年間最多ラウンド回数は98回だという。
軽やかな動きで てきぱきプレー
話しているうちに、午後1時を過ぎ、スタート時間になった。
吾朗さんのゴルフバックにはドライバーに8U、7、8、9番のアイアン、PW、60番ウェッジ、パターの8本。定子さんはドライバー、8番アイアン、46番ウェッジ、SW、パターの5本。実はラウンドが始まってわかるのだが、定子さん、FWを1本忘れてきたらしい。
この日は中コースを使用。吾朗さんはゴールドティー、定子さんはピンクティーからである。倶楽部の規約もあって帯同できず、1番と折り返してくる3番を拝見した。
1番のパー5。吾朗さんのティーショットは150ヤードのウェアウェイへ。定子さんのショットも60ヤードほど飛んだ。2打目、8Uを使った吾朗さんのショットはティーショットより飛んだのではないかと思えるほどの会心のショット。定子さんは2打目を打とうとして、ここでFWを忘れたことを知る。「しょうがないわ、私はこれで」と8番アイアンを握ったが、気の毒に飛距離が出なくて、カートに乗るヒマもない。
3番のパー4は241ヤードの軽い打ち上げ。吾朗さんは2打目をサイドバンカーに入れたが、見事にオンさせ、ボギー。一方、定子さんはこの日はなにせアイアンだから、カートに乗せてもらえず、コツコツを歩いてグリーンまで来た。それでも、定子さんは嫌な顔ひとつせず、ホールアウト。2人ともてきぱきとしたプレーぶりで、これならスムーズに9ホールを回れる。
1日2食。肉が好き。
「今日は今年21回目のプレーです。いつもはもっと多いが、今年は雨が多くてやめちゃうからね」と笑う吾朗さん。日頃、寝るのは午前2時ころで、起床は午前11時だという。「途中3回は起きるが、8時間以上は寝る。食事は2食。昼はサンドイッチに黒砂糖にチーズ。黒砂糖とチーズを一緒に口の中で混ぜてコーヒーを飲むと旨くてねえ」
定子さんがにこやかに続けた。「私は早く起きますが、その代わり昼寝をします。夕食はお父さんは肉が大好きで、しゃぶしゃぶとか。400グラムぐらいぺろりと食べちゃう。朝から肉ってこともありますよ」
吾朗さんの自慢は90歳だった5年前の2017年4月2日のプレーだ。滋賀県の琵琶湖CC北コースで、前半39で回った。「友人がもうハーフやったらと言うのでやったら、なんと36で回れたんですよ。いやあ、驚いたねえ」
ゴールドティーからとはいえ、なんと90歳がギネス級の75で回ったのである。
吾朗さんは毎夜、バッティングの練習を73球打って寝ることを日課にしている。「73球かね?もらったりしたボールが73球あるだけの話です」2人は20年ほど前から、太極拳とヨガを近くの社会保険センターで続けているとか。
ゴルフは人生の縮図。いい時も悪い時もあるよ。
そして最後にゴルフとはー。「ゴルフ場にはオゾンはあるし、空気もいい。それに大自然を相手にやるスポーツに教えてもらうことは多いね。同じゴルフ場なのに、40で回った翌日には50を打つ。パットも入るときもあれば入らないときもある。人生の縮図というか、やっとそんなことがわかるようになったねえ」。
そう話す95歳の横には、穏やかな表情の91歳がいる。まさに夫唱婦随のすばらしきゴルフ人生。いつまでもお元気でー。
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